神殺しのクロノスタシス6

天音side

――――――…こちらは、海底都市を散策中の僕とキュレムさん。

「すげー…。まさにおとぎ話の世界だな。人魚とかいそう」

キュレムさんは興味津々の様子で、広い海底都市を見渡していた。

…本当にね。

海や湖の底に、都市があるなんて…。ファンタジー小説でしか聞いたことがないよ。

しかも、こんなに広い。

見渡す限り、ずっと海底都市が広がっている。

既に都市は放棄されているらしく、生き物の気配はなく、あちこちに藻がくっついて、化石のようになっている。

死んだように静まりかえった都市に、命の息吹はなかった。

しかし…。

「…これ、都市に住んでた人が使ってたものかな…」

僕は、道端に落っこちていた鉄製の細長棒を拾い上げた。

砂まみれになってるけど、砂を払い落としたら、まだ綺麗なように見えた。

これ、何だろう…。…杖かな?

海底都市を歩いていると、ここに住んでいたであろう誰かの忘れ物が…。ガラスの欠片とか、鏡の破片なんかが落っこちていた。

確かに、この場所にかつて生き物が住んでいたという証拠だ。

一体誰が…いつの時代に住んでたんだろう…?

「冥界なんだから、やっぱり、ここは魔物の都市なのかな…」

「魔物って、都市なんか作るのか?」

「そ、それは分からないけど…」

「あいつら、獣みたいなものだと思ってたんだが…。都市なんか作る知恵があるのか?」

こうして都市の残骸が残ってるってことは、そうなんだろうね。

「ひとくちに魔物と言っても、色んな種族がいるでしょう?ベルフェゴールさんやリリスさんみたいな上位種族だったら、知能も高いし…」

「あぁ、そういやそうか…」

普通の人間みたいに賢いもんね、ベルフェゴールさんもリリスさんも。

マシュリさんもそうだし、マシュリさんの同族である…神竜バハムート族もそう。

知能の高い魔物も存在している。

ということは、都市を作る知恵と技術があったとしても、何ら不思議ではないよね。

いやはや。まだまだ知らないことがいっぱいだね。
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