神殺しのクロノスタシス6
「知能の高い魔物ねぇ…。まぁ、そういうのがいてもおかしくはないだろうけど」

「うん」

「でも、何でわざわざ、こんな海の底に都市を作ったんだ?」

…うっ。

…それを聞かれると、僕も困るな…。

「な、何でなんだろう…?」

「不便じゃないのか?こんな深海の底でさぁ…。都市を作る知恵があるなら、普通に陸地に作れたはずだろ」

「…そうだよね…」

何で、わざわざ湖の底に都市を作ったんだろう?

水中都市の建設なんて、きっと大変な苦労があっただろうに…。

それでもこうして、深海の底に都市を作ったってことは…。

僕達には分からないけど、水の中の方が都合が良い理由があったんだろうね。

もしかして、僕達が今こうして、水の中なのに平気で呼吸が出来ていることにも、関係があるのだろうか…?

「それに、苦労して作った街を放棄して、ここの住民は何処に消えたんだよ?」

「え。そ、それは…。…別の場所に移住したんじゃ…?」

「こんな立派な都市を置き去りにして?ここ、まだまだ住めるだろ」

…確かに。

これほどの規模の都市、作り上げるまでには長い時間がかかっただろうに。

それなのに、どうして今は誰も住んでないんだろう…?

一族が全滅した?何らかの理由で…。

だけど…海底都市を作るほどの知識と技術がある、知能の高い種族が…そう簡単に絶滅するものだろうか?

この海底都市を作った種族より、更に上位の魔物に襲われて壊滅した…とか?

何の為に…?

「それとも、元々ここって…水の中じゃなかったのかも」

と、キュレムさんが呟いた。

え?

「どういうこと…?」

「だから、元々都市は地上にあったけど、何かの理由で水没して、ここら一帯が湖の底に…。…ふぁっ!?」

えっ?

突然キュレムさんが素っ頓狂な声を出して、僕もびっくりしてしまった。

「ど、どうしたの?」

何かいた?見つけた?…魚とか?

「なんか、今白っぽいものが…。あれ、何だ?気持ち悪い」

「白っぽいもの…?」

キュレムさんが指差す方向に、何やら白っぽい小さな山が出来ていた。

都市の瓦礫の下に、下敷きになっているようだ。

…ちょっと、持ち上げてみようか。

僕はそっと白い山に近づいて、力を入れて瓦礫を持ち上げた。

「ごめん、キュレムさん。そっち持ってもらえる?」

「はいよ。せーの…」

せーの、で二人がかりで重い瓦礫を取り除くと。

その下から出てきたのは、一面真っ白の、砕けた破片の山。

何だろう、これ…。発泡スチロールの欠片みたいな…。

「…ふぁっ!」

「な、何?」

またしても、突然キュレムさんが叫び声をあげて。

またしても、僕の心臓がドキンとした。

突然大きな声出さないで。びっくりするから。
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