神殺しのクロノスタシス6
第10章

羽久side

――――――…竜の祠を守る老神竜から、マシュリの心臓を取り返すと。

竜の祠は、跡形もなく消えてしまった。

…それは、良いのだけど。

「…何処だ?ここ…」

「…分かんない…」

ついさっきまで、洞窟があったよな?

祠が崩れ去ったと思ったら、今度は。

植物の一本も見つからない、見渡す限りの…。

…砂漠。

いや、そうはならんやろ。…って言いたい。

なってるけどな。

「どうせなら、現世まで送ってくれれば良いのに…。不親切だね」

「家に帰るまでが遠足だってことを言いたいんじゃないの?」

令月とすぐりが、そうぼやいた。

ま、まぁ…。絶対揉めると思ってたのに、あまりにもあっさり心臓返してもらえたからさ…。

帰り道くらいは、自分で何とかしようぜ。

そこまで期待するのは欲張りってもんだ。

それに、今度は皆一緒だ。

砂漠で遭難したとしても、仲間と一緒なら怖くない。

…よな?

いや、砂漠で遭難なんてしたことないから…分からないけども…。

「これ…一体どっちに進めば良いんだ…?」

「砂漠で昼間に動くのは危険だよ。夜になるのを待たないと」

「残念ですね。冥界には朝も昼も夜もありません」

「じゃあ、迷う必要はないね。真っ直ぐ進もうか」

…それで脱出出来るのだろうか。甚だ疑問だが…。

「ねぇ、見て。あそこ」

ベリクリーデが、とある方向を指差した。

「家みたいなのが見えない?都市があるのかも」

都市…?

「砂漠に…都市なんてあるのか?」

「オアシスがあれば、そこが集落になることはあるだろうな。…とは言ってもここは冥界だから、あったとしても魔物の集落だが」

と、ジュリスが答えた。

魔物の集落…。非常に危険な香りがするが…。

「…他に目指す場所もないし、行ってみるか…?」

「…そうだね、それしかなさそうだね…」 

…よし。こうなったら、後は野となれ山となれ。

俺達は、ベリクリーデが見つけた砂漠の都市(?)を目指すことにした。

…まさか、こんなところで砂漠の散歩をすることになるとはな。

用事はもう終わったのだから、早いところ帰りたいのだが…?
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