神殺しのクロノスタシス6
しかし、この不思議な世界は、俺達をそう簡単に帰すつもりはないようだった。

しばらく歩き続けて、歩きにくい砂地と、歩く度に立ち上る砂ぼこりに辟易し。

いい加減うんざりしてきた頃に、ようやく辿り着いた。

「…いかにも…って感じだな」

「う、うん…」

砂地のど真ん中に、深く青々とした水の湖。

その周りに、ヤシの木みたいな植物が生い茂っていた。

更にその近くに、崩れかけた遺跡と、石を積み上げた塔のようなものが建っていた。

塔は、中途半端な高さで切り取られ、途中ですっぱりと途切れていた。

崩れたのか?…壊されたのか?その割には、ちっとも瓦礫が落ちていないが…。

「集落っちゃあ集落だが…。…人の気配はないな」

冥界だから、人じゃなくて魔物だが…。

「かつては、ここに都市があったんでしょうね」

こんな砂漠のど真ん中にな。

…しかも、見つかったのは遺跡だけではない。

巨大な、ピラミッドのような建物の残骸まである。

マジかよ…大昔にタイムスリップしたみたいだ。

…しかも。

「うわっ…。何だ、これ…」

俺は湖の畔まで来て、思わずぎょっとした。

「ど、どうしたの…?羽久…」

「見てみろよ、この水の中…」

「…ひぇっ…」

ビビリチキンなシルナは、「それ」を見るなり、悲鳴を上げて俺の背中に隠れた。

湖の底には、白いものがびっしりと埋め尽くされていた。

石灰か、砂かと思ったが…そんな可愛いものじゃない。

骨だ。

大小様々の白い骨の欠片が、湖の底を埋め尽くしていた。

…墓なのか?ここは…。

…しかも、湖の周囲には、不思議な…と言うか、不可解なものがたくさん落ちていた。

「ジュリス、これ何だろう?」

「…?ガラスの破片…だな。やけにたくさん散らばってるが…」

まるで、この場所で巨大な窓ガラスを粉々に壊しでもしたように。

大量のガラスの破片が、無数に散らばっていた。

うっかり踏み抜くと、足を怪我しそうだ。

骨にもビビるけど、ガラスの破片も不気味だぞ。

あまりにも、砂漠に不釣り合いって言うか…。

この場所に、かつて集落があったのはほぼ確かだろう。

多分…相当発達した文明があったんじゃないか?そうでなければ、あんなに器用に石を積み上げて、塔を造ろうとはしないだろう。

「…何だか、さっきもこんなもの見せられたな」

俺は、思わずポツリとそう呟いてしまった。

「…羽久、どういうこと?」

「いや…ベリクリーデと一緒に別行動してた時に…」

「確かに、ちょっと似てるね」

俺と同じものを見たベリクリーデも、俺の言葉に同意した。

俺達が冥界に来てから、最初に送り込まれた場所。

あの、謎の古代都市…の、遺跡の跡地みたいな場所。

あの場所にそっくりな気がする。
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