神殺しのクロノスタシス6
何が嬉しくて、ガイコツ軍団から全力ダッシュで逃げなければならないのか。

あれって魔物なんだよな?ガイコツの魔物とかいるのか…!?

えぇい、考えるのは後だ。後。

「…!あそこ!」

ピラミッドの外壁の一部が崩れて、外の光が差し込んでいる箇所を見つけた。

外に飛び出すなら、あそこからが良いだろう。

ピラミッドの外にまでガイコツが追いかけてきたらどうするのか、って?

それはもう…その時考える。

とにかく、今は一刻も早くピラミッドの外に…。

…しかし。

「いや、待て…!」

先頭を走っていたジュリスが、突然足を止めた。

な、何で止まるんだ?

「…!」

その理由は一目瞭然だった。

俺達が崩れた外壁に辿り着く前に、別方向から、ガイコツ軍団の一味が先回りしていた。

後ろにもガイコツ、前にもガイコツ。

これじゃあ挟み撃ちじゃないか。

そ、そういう知恵が回るのか。こいつら…!

「ひ、ひょえ〜…」

シルナほどじゃないが、俺もそんな間抜けな声が出そうだよ。

絶体絶命のピンチ、って奴じゃね?…これ。

それなのに。

「はぁ、もう今日だけで随分走り疲れたので、ガイコツの仲間入りをするならそれでも良いような気がしてきました…」

「ルイーシュてめぇ!諦めんな!」

…この二人は余裕だし。

「おっ、戦うしかない感じ?ガイコツと戦うなんて、初めての体験だねー」

「少なくとも、巨人のお腹の脂肪よりは骨の方が斬りやすそうだ」

腹の脂肪ってどういうこと?

元暗殺者組は、いかなる時でも敵とみなせばただちに臨戦態勢に。

相手が神竜族だろうが、ガイコツだろうが関係なし。

肝据わってんな。

現世の生き物だったら、この二人に勝てる敵がいるとは思えない。

だが、ここは冥界で、あのガイコツは(多分)魔物なのだ。

一筋縄では行かないだろう。

出来れば、戦わずに逃げたいけれど…。

「どうする、戦うか…!?」

「四の五の言ってる場合じゃないね。やろう」

俺より遥かに肝の据わってるベリクリーデが、両手に細い銀色の剣を構えた。

強そう。

仕方ない。…こうなったら、俺も覚悟を決めるか。

相手がガイコツだろうと何だろうと、仲間が一緒なら恐れるに足らず。

迫ってくるガイコツ相手に、仲間達全員で迎え撃とう…と、した、

その時だった。

「…えっ!?」

意外と、しっかりした建物だと思っていたのに。

大量のガイコツ軍団が、狭い場所に押し掛けてきたせいか。

ピラミッドの床に、大きなヒビが入った。

ピシピシピシ、と嫌な音をして、あっという間にヒビは大きく広がった。

…これって、もしかしてヤバいのでは?

「もしかしなくてもヤバいかもしれませんね。…僕は死にませんけど」

こんな時でも、俺の心を読むことだけは忘れなナジュだった。

そんなこと言ってる場合じゃないだろ、と言おうとしたが、言葉にならなかった。

ミシミシと音を立てて、ついに足元が崩れ落ちたからである。

「ふぇっ…。ふわぁぁぁぁ!!」

崩れ落ちるピラミッドに、シルナの間抜けな悲鳴が響き渡った。
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