神殺しのクロノスタシス6
「へぶっ」

「あ痛っ」

霧が晴れるかのように、突然視界が明るくなった。

地面に叩きつけられたかと思いきや、意外と大した衝撃ではなかった。

と、いうのも。

「あ…ごめん、シルナ。クッションにしてた…」

「いたぁぁぁぁぁ」

どうやら、シルナが先に着地し、その上に俺が墜落したらしい。

ナイス、シルナクッション。

逆じゃなくて良かった。

「ひ、酷い…。羽久が私に…酷いことを考えてる気がする…」

「はいはい、退いてやるからそう喚くな。…しかし心地の悪いクッションだな」

「酷い!」

うるせぇ。

そんなことより、ここにシルナがいるってことは…。

いや、待て。

さっきから、冥界でずっと感じていた重苦しい気配がなくなっている…ような。

その時。

「えっ…」

「あ…。シュニィ…」

驚いた顔をして固まったシュニィが、目の前にいた。

シュニィだけじゃない。

シュニィの相方であるアトラスや、『門』を開いてくれていた吐月や、クュルナや無闇やエリュティア。

それに、イーニシュフェルト魔導学院を守ってくれているはずのイレースと、何故かルディシアの姿まであった。

現世で俺達を待ってくれているメンバーが、見事に勢揃い。

シュニィ達が何で冥界に…と思ったが
逆だ。

俺達が、現世に帰ってきたのだ。

…ピラミッドの倒壊に巻き込まれたかと思ったら、まさかの現世に帰還。

願ってもない状況だが、さすがに唐突過ぎてビビる。

えぇっと…。

「…た、ただいま…?」

他に気の利いた言葉が思いつかなくて、頭に思い浮かんだ最初の言葉を口にした。

すると、シュニィは感極まったように。

「…!お帰りなさい、皆さん…!」

心の底から嬉しそうなその表情に、俺も一安心した。

…良かった。戻ってこられて…。

それに、シュニィは「皆さん」と言った。

振り向くと、そこには一緒に冥界遠征に行ったメンバーが揃っていた。

「ふぅ、疲れた…。もう当分働きたくない…」

「働きたくないのは良いから、とりあえず俺の上からど、け!」

「あれ。戻ってきちゃったー」

「意外とあっさり帰ってこられたね」

ルイーシュとキュレム、すぐりと令月が。

それに。

「よ、良かった…。皆、無事に戻ってこられて…」

「命拾いしましたね、皆さん。…まぁ僕は元々死にませんが」

天音とナジュが。

そして、ジュリスもベリクリーデも…。

「やれやれ…。冥界遠征なんざ、金輪際御免だな」

「…あれっ?私、何でここに…。ジュリス、何で居るの?」

「…お前も戻ったか…」

…ベリクリーデの様子が何だか変だが、大丈夫か?
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