神殺しのクロノスタシス6
さぁ。どうしたものか。

時魔法で何とか出来るか?

軍団だというのに、てんでバラバラの行動を取りやがるものだから、行動が予測しにくくて仕方ない。

どのみち、やるしかない。

杖を構えようとした俺を、マシュリはそっと床に降ろした。

「マシュリ君…!良かった、無事だったんだね…!」

飛んできたマシュリを見て、シルナは喜びの声を上げた。

周り、ガイコツまみれじゃなかったら、もっと感動的な再会だったのにな。

このガイコツのせいで、全部台無しだよ。

「うん、ありがとう」

「大丈夫だよ、マシュリ君。ちょっと待っててね、今、このガイコツ部隊をなんとか…」

「皆、下がってて」

え?

そう言うなり、神竜バハムート形態のマシュリは、すぅ、と深く息を吸い込んだ。

身体中が焦げそうなほど、強い熱が爆発的に膨れ上がった。

次の瞬間、さながら超巨大火炎放射器の如く、マシュリが竜の炎を吐き出した。

「ほぇぁ!?」

これには、シルナも間抜けな声を上げて腰を抜かしていた。

思いっきり、味方も炎に包まれているが。

肌にチリチリとした熱気は感じるのに、不思議と触っても熱くない。

吸い込んでも、全く苦しくない。ほとんど無味無臭。

炎のはずなのに、まるでただの赤い水蒸気みたいだ。

しかし、それは俺達が現世の存在だから。

冥界の生き物であるガイコツ部隊には、効果覿面だったようで。

マシュリの吐き出した竜の炎に巻かれて、ガイコツ部隊は断末魔の悲鳴を上げていた。

ガイコツって…悲鳴、あげるんだ…。

あんなに苦戦していたのが嘘みたいに。

俺達が唖然としている間に、マシュリの竜の炎が、ガイコツ部隊を跡形もなく灼き尽くした。

わらわらと『門』に押しかけ、溢れ返っていたガイコツが、ようやく途切れた。

「今のうちに」

「…!はいっ…『門』を閉じます!」

吐月も呆気に取られていたが、マシュリに声をかけられて、ハッと我に返ったようで。

ガイコツ部隊が途切れたタイミングを見計らって、吐月はすぐさま『門』を閉じた。

かくして。

冥界から連れて帰ってしまった「お土産」は、マシュリの炎に焼かれて、残らず灰になったのだった。

…まぁ、元々骨なんだけど…。
< 197 / 404 >

この作品をシェア

pagetop