神殺しのクロノスタシス6
俺は、未だに警戒心を一切解いていないが。

シルナは。

「ふわぁぁぁ〜!うま〜っ!!」

満面の笑み、最高にご満悦な様子で、例のチョコスフレケーキをぱくついていた。

…幸せそうで何より。

「うん、やっぱり美味しいですねこれ」

不死身で怖いもの知らずのナジュも、当たり前のように食ってるし。

更に。

「凄く柔らかいね、これ」

「うん。ツキナにも食べさせてあげたかったなー」

ナジュに負けず劣らず、怖いもの知らずの令月とすぐりまで、普通に食べてる。

お前ら、ついさっきまでそのケーキをくれた敵の手首を切り落としたり、指を折ったりしてた訳だが。

そのことはもう忘れたのか?

「喜んでいただけたようで何よりです」

で、こっちの謎の不審者も、微笑ましそうにシルナ達を見つめているし。

…結局、こいつは何者なんだよ。

「時魔導師殿もどうですか?」

俺の睨むような視線を感じたのか、微笑みを浮かべたままケーキを取り分けた小皿をこちらに差し出した。

…ふざけんじゃねぇ。

「シルナを懐柔するのは簡単でも、俺はそうは行かないぞ」

俺はシルナと違って、チョコケーキくらいじゃ絆されないからな。

「そうですか」

「お前、一体何者なんだ?マシュリを殺したのはお前だって…」

「僕を殺したのは、その人じゃないよ。…雰囲気は似てるけどね」

すかさず、マシュリがそう答えた。

…それは良いんだけども。

「…マシュリ、何でお前までケーキ食ってんだよ…!?」

お前、自分がこいつに殺されかかったこと理解してるのか?

何で普通に食べてんの?

「え?だって…。仮に毒が入ってたとしても、毒程度で僕は死なないし…」

「だからって食うなよ…!」

怖いもの知らず多過ぎだろ。このパーティ。

…あぁ、もう頭痛くなってきた。

「…さっきお前、俺達と親交を深める為に来たって言ったよな?」

俺は、その謎の男に聞いた。

「言いましたね」

じゃあはっきりさせよう。

「それなら、お前の素性を話せよ。お前は何者なんだ?魔物じゃないんだよな?…マシュリを殺したのも、お前じゃ…」

「質問が多いですね」

「良いから答えろ。お前は何者だ?」

「隠すつもりはありません。包み隠さずお話しますよ…。私の名はリューイ。我が主に賜った名です」

リューイ。

これで、この謎の男の名前が明らかになった。

「で?そのリューイさんは何なんだ。人間でも、魔物でもなく…」

「"七大天使アークエンジェル"の一人。天使です」

「ふーん。天使…」

天使、天使ねぇ。納得…。

…。

…って、納得出来る訳ねーだろ。

「はぁぁぁっ!?」

俺は、思わずデカい声をあげてしまった。
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