神殺しのクロノスタシス6
…話はまとまった。

俺とシルナ、それからマシュリの三人は、イーニシュフェルト魔導学院に戻ることにした。

…とは言っても、真正面から入れば、またしても不法侵入者として捕らえられてしまう。

俺達の目的は、あくまでナジュと天音に接触すること。

これだけだ。

生徒や、教員達とも争うことなんて望んでない。

ましてや、朝っぱらから生徒達の目の前で、教師同士の争いを見せてしまったのだ。

これ以上、何の罪もない生徒達を怯えさせたくはなかった。

そこで。

「…気をつけてね。音を立てないように」

「あぁ」

「猫仲間に見張ってもらってるから、今のうちに」

俺達は、人目を忍んで、こっそり学院の裏門から忍び込むことにした。

まさか、自分の学院に帰る為に、こんな方法で入らなきゃいけないとはな。

まるでこそ泥みたいじゃないか。

自分の家のはずなのに。

俺でさえ耐えられない思いなのに、学院長であるシルナの思いは如何ばかりか。

…だが、弱音を吐いている暇はなかった。

音を立てないよう、俺達はこっそり学院の敷地内に侵入した。

俺もマシュリみたいに、気配を消せたら良かったんだけどな。

イレースはともかく、元暗殺者の令月とすぐりは、僅かな足音や衣擦れの音でさえ反応する。

あの二人に補足されたら、その時点で終わりだ。

味方の時は、頼もしいことこの上ないが。

その分、敵に回ると、今度は恐ろしいことこの上ない。

「いざとなったら僕が囮になるから、急いで」

「ふざけんな、マシュリ。捕まるなら全員一緒だ」

俺に、マシュリを置き去りにして逃げろと?

冗談じゃないぞ。

「それより、天音とナジュは…?マシュリ、気配を辿れるか?」

「ちょっと待って。匂いを辿る」

ありがとう。

マシュリが居てくれて助かった。

…しかし。

「…二階…?いや、一階…。…あぁ、違う匂いが強くて辿れない」

え?

マシュリは険しい顔で、ブツブツつぶやいていた。

…違う匂い?

「大丈夫か?マシュリ…」

「大丈夫…。…うん、大体分かった」

…本当に大丈夫なのか?

「天音とナジュは?何処にいる?」

「天音は保健室にいる。ナジュは…多分職員室だね」

成程。まぁ、予想通りだな。

「念の為に聞いとくが…イレースと、暗殺者二人は何処にいるか分かるか?」

「匂いがバラバラだから、多分それぞれの教室にいるね」

そうか。授業中だもんな。

でも、助かった。それぞれバラバラの場所に居るなら、見つかる危険性も低くなる。
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