神殺しのクロノスタシス6
四人共、一切容赦はなかった。

俺達を傷つけることに、全く躊躇いはない。

「くっ…!」

ともかく応戦しなければ、と杖を握り締めたが。

俺にとって、目の前にいるのは仲間だった。

俺のことを忘れていたとしても、仲間であることは変わらない。

敵なんかじゃない。これまでずっと、一緒に毎日を過ごしてきた仲間。

仲間を傷つけることは、どうしても出来なかった。

躊躇いが、俺を鈍らせた。

その隙を、天音は見逃さなかった。

寸分違わず、天音の刃が俺の顔面に迫った。

「羽久!」

「…!」

悲鳴のようなシルナの声にハッとして、我に返った時にはもう遅かった。

次の瞬間には、天音の剣に切り裂かれる。

…しかし、そうはならなかった。

天音の剣が、俺に届くその一瞬前。

赤黒い刀身の剣が、天音の剣を受け止めたからだ。

「…!?」

受け止められた自分の剣に、赤黒い毒のようなものがじわじわと侵食するのを見て。

天音は、咄嗟に剣を振り払った。

「…また増えた…。…今度は誰?」

「…危ないところだったな」

俺は、突然目の前に現れたその人物に、目を見開くしかなかった。

その人物というのは、赤黒い剣を持った…。

「ジュリス…!?」

「ジュリスだけじゃないよ」

背後から、ひょこっと顔を覗かせたのは。

ジュリスの相棒の、ベリクリーデだった。

こ、この二人が何でここに。

「お前達…!一体、何でここに?」

「話は後だ。ボサッとしてる暇はないぞ」

ジュリスは、改めて天音と向き合った。

「まずはこの場を切り抜ける。お前も、もう躊躇うな」

「…」

躊躇うな…か。

無茶なことを言う。

…でも、ジュリスの言う通りだ。

腹を決めなくては。まずはこの場を切り抜けて、態勢を立て直して、改めてまた戻ってくる。

仲間を傷つけたくないからって躊躇っていたら、俺達が先に殺されてしまう。

思い出してもらうどころじゃない。

…それだけは避けなくては。

「…分かった。…覚悟を決めるよ」

「よし」

俺も、強く杖を握り締めた。

何がどうなって二人が来てくれたのか分からないが、ジュリスとベリクリーデが加勢に来てくれたのは有り難かった。

向こうはナジュを除いて四人、こちらは俺とシルナ、マシュリ、そしてジュリスとベリクリーデの五人。

一気に、形勢逆転だ。

…だが、油断は出来ない。

こちらが数で勝っていても、全く安心出来ないのだから、俺の仲間達は強過ぎる。
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