神殺しのクロノスタシス6

羽久side

――――――…命からがら、イーニシュフェルト魔導学院から逃亡し。

俺達が向かったのは、先程の、例の路地裏だった。

…また戻ってきてしまったな。…無様に。

でも、あの四人を同時に相手にして、命があるだけマシなのかもしれない。

それに今は、さっきまでいなかった仲間が二人、増えている。

「ジュリス…。それに、ベリクリーデ…」

「手加減をしろって言っただろうが。この馬鹿っ」

「だってジュリス、ドカンと一発しろって」

「比喩だ、比喩!物の例え!」

「…ひゆ?それ美味しいの?」

「あぁもう!語彙力!」
 
…えーっと。お取り込み中のところ悪いんだけど。

あんまり大声を出さないでくれ。追いかけてはきてないと思うけど。

こんなところに潜んでいると、周囲に知られない方が良いだろう。

「はぁ…。俺はお前を相手にしてると、いつも気が抜けるよ…」

「えへへ」

「褒めてないからな…」

などという、いつものジュリスとベリクリーデらしい二人のやり取りに、程よく緊張感が緩んだ。

…この状況じゃ、誰が仲間になってくれても頼もしいってもんだ。

「ジュリス君、ベリクリーデちゃん…。助けてくれてありがとうね」

シルナが、二人に礼を言った。

「ん?あぁ…。まぁ、成り行きだけどな」

「学校に来たら、三人が襲われてたから、隙を見て助けようってジュリスが」

そうだったのか。…偶然とはいえ、助かったよ。

二人が来てくれてなかったら、果たしてあの場を切り抜けられていたかどうか。

…俺が腑抜けだったせいなんだけど。

「無事で良かった。…これを無事と言って良いなら、だけどな」

「…ジュリス君…。…聞かないの?何で私達が、イレースちゃん達と戦ってたのか…」

「あぁ…。実はな、それを聞く為に俺達は学院を訪ねようとしたんだよ」

…え?

「でも、あの状況を見る限り、あんたらも俺達と同じなんだな」

「どういうこと…?」

「朝起きたら、記憶がなくなってた。聖魔騎士団の全員が、ベリクリーデと…あんたら3人のことを忘れていたんだ」

「…!?」

思わず、耳を疑った。

…何だって?
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