神殺しのクロノスタシス6
…おかしい。

いつものシュニィなら、もっと話が分かるはずだ。

生来平和主義で、手荒なやり方を嫌うシュニィは。

仮に隊舎に賊が忍び込んだとしても、そのようなトラブルは、可能な限り話し合いによって解決することを望むはず。

素性の分からない相手に、こんな風に容赦なく杖を向けるような真似はしない。

記憶を失っただけではなく、本来の性格まで歪められている…?

そういえば、俺もそうだった。

部屋に侵入者…ベリクリーデが入り込んできた時。

あの時はベリクリーデのことを、正体不明の侵入者と思い込み。

ベリクリーデの話を聞こうともせず、真っ先に杖を向けた…。

普段の俺だったら、まず説得と話し合いを優先し。

万が一向こうが暴力に訴えようとしたら、その時初めてこちらも杖を取る。という判断をしたはずだ。

それなのに俺はあの時、何であんな暴力的な、極端な行動を取ってしまったんだ?

だが、今は目の前のベリクリーデを救うのが先だった。

「違うんだ、シュニィ。杖を収めて、話を聞いてくれ!」

「ジュリスさん、いくらあなたの頼みでも聞けません。聖魔騎士団に仇為す者は、私の手で…!」

「っ、くそっ…!」

止めようとしても、シュニィは止まってくれそうになかった。

こうなったら、最終手段。

強行突破あるのみ。

俺はベリクリーデに向かって飛び出し、その手を強引に掴んだ。

「逃げるぞ、ベリクリーデ!」

「っ…!」

窓を突き破って、俺はベリクリーデを連れて外に飛び出した。

我ながら大胆なことをしたものだが、シュニィからベリクリーデを守る為には、こうするしかなかった。

「っ、待ちなさい!」

シュニィが叫ぶ声が聞こえたが、俺は振り返らなかった。

そのまま俺はベリクリーデを連れて、聖魔騎士団魔導部隊隊舎の敷地内から飛び出したのだった。
< 269 / 404 >

この作品をシェア

pagetop