神殺しのクロノスタシス6

羽久side

―――――――…という話を、ジュリスは詳しく話してくれた。

「で、学院に来てみたら…あの騒ぎだろ?」

俺達とイレース一味で争ってた奴ね。

「こりゃこっちも只事じゃねぇと思って、割って入ったんだが…」

「そうか…。経緯はどうあれ…助かったよ」

あの時ジュリスが助けに入ってくれなかったら、今頃どうなっていたか。

…それにしても、俺達も相当不可解な現象に巻き込まれたと思ってたが。

ジュリス達も大概だな。

今のジュリスの話を聞くに…。

「イレース達が俺とシルナ、それからマシュリを忘れたように…。聖魔騎士団のシュニィ達も、ベリクリーデを忘れたって言うのか…?」

「…とても信じられないが、そう考えるべきだろうな」

本当に信じられないな。

でも、この不思議な現象はイーニシュフェルト魔導学院でのみ起こったことではないと知って、ちょっと安心もした…ような。

少なくとも、仲間が増えたのは有り難い。

絶望的な状況だったからな、さっきまで…。

シュニィが忘れてたってことは…多分イレースや令月達がそうであったように、他の大隊長達も…。

クュルナや無闇やエリュティア達も、ベリクリーデの記憶を失ってるんだろうな。

しかしそうすると…数々の疑問が浮かんでくる。

「…この際、何で突然記憶がなくなったのか、という疑問については後回しにしよう」

と、シルナが言った。

「それよりも、どうして記憶をなくしていたはずのジュリス君が、ベリクリーデちゃんを思い出したのか…。その理由が気になるね」

…確かに。

その仕組み?が分かれば、イレース達にも適用して、記憶を取り戻すことが出来るかも。

「さっきの話を聞く限り…。ベリクリーデがジュリスに抱きついたら思い出した…って解釈で良いのか?」

…何でそれで思い出したのか、全く意味不明だけど。

「ベリクリーデの抱擁にそんな力あんの?」

「…??ほーよー?」

ベリクリーデ本人は、自分が何をしたか理解していないらしく、きょとーんとしている。

うーん…。自覚なしと来たか。

「抱擁っつーか…。浄化された?みたいな印象だったが…」

…浄化…。

白い光がどうの、って言ってたもんな。

…うん。分からん。

更に、分からないことはまだまだある。

「それに、ジュリス君が見たっていう、ピンク色のミミズ…?っていう生き物の正体も気になるね…」

「あぁ…。あのミミズな。一体何だったのか分からんが…」

「…それ、もしかして変な匂いしなかった?」

と、マシュリが横から口を挟んだ。

…変な匂い?
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