神殺しのクロノスタシス6
そこにいたのは。

「お前…リューイ…!」

…お前、最初に現れた時も似たような感じで出てきたよな。

普通に現れてくれないか。俺の心臓に悪い。

俺達を観察すると言いながら、しばらく姿を見なくなったと思ってたら…。

「もとの世界にいらっしゃらなかったようなので、探すのに少し手間取りました」

「お前…何処に行ってたんだ?」

こっちは大変だったんだぞ。お前のいない間…。

「天界に戻っていました」

と、リューイはさらりと答えた。

天界だと。

「俺達を観察するんじゃなかったのかよ」

「観察はもう終わりました。報告の為に、智天使様のもとに戻っていたのです」

あぁ、そう…。

「…で、何でまた戻ってきた?改めてマシュリや、今度は俺やシルナを手に掛けるつもりか?」

仲間達からも追われている状況で、その上天使であるリューイとも敵対するとなると。

非常に不利な状況と言わざるを得ない。

でも、そうしなければシルナと共にいられないなら、俺は何でもやるよ。

…しかし、警戒する俺をよそに、リューイは。

「いいえ。そのような命令は受けていません」

「じゃあ何の命令を受けてるんだよ」

「そう警戒する必要はありませんよ。私はあなた方の敵ではない」

…は?

「むしろ、味方をする為に来たんです。智天使様は、あなた方を他の天使から守る為に、私を遣わされた」

「どういうことだ…?お前ら、俺達を…シルナを裁きたいんじゃなかったのか」

裏切り者のシルナ・エインリー、なんだろ?

この呼び名、今まで色んなところで、鬱陶しいくらい聞いてきた。

何回聞いてもくそったれな呼び名。

「そのつもりでしたが、智天使様は聖賢者殿を神の裁きを下すに値しないと判断されたのです」

「何だそりゃ?突然心変わりしたとでも言うのか?」

天使って、心変わりなんかするの?

聖神ルデスの操り人形か何かだとおもってたが。

「智天使様は、聖賢者殿の罪深さではなく、聖賢者殿の本来持つ善意の方を信じようとなさっているのです」

「…善意…」

「仲間を救う為に命を懸けられる者が、本当に救いようのない悪人などであるはずがない、と」

「…」

…その言葉が、俺達を騙す嘘じゃないとしたら。

智天使様っていうのは、相当話の分かる人物らしいな。

「…信じて良いのか?」

「勿論です。…と言いたいところですが、私が何を言っても完全に信用してもらうのは難しそうですね」

よく分かってるじゃないか。その通りだよ。

「例え信じてもらえなくても、私は智天使ケルビム様のご命令に従うまでです」

「そのご命令っていうのは何なんだ?」

「聖賢者殿御一行を、他の天使から守るように、と」

…他の、天使?

それって、どういう…。
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