神殺しのクロノスタシス6
よし、そうと決まれば。

「具体的な作戦を考えよう。まず学院に、」 

と、言いかけたその時。




「…へぇ。何の作戦を考えてるのか、俺にも教えてもらえませんか」



「!?」

突如聞こえた声に振り向くと、そこには聖魔騎士団魔導部隊の制服を着た…。

…空間魔法の使い手、ルイーシュの姿があった。

る…ルイーシュだと…?

「お前、ルイーシュ…!何でここに…!」

「俺の名前、何で知ってるんですか。ますます怪しいですね」

知ってるに決まってるだろ。 

こんな発言するってことは、やっぱりルイーシュも俺達のこと忘れてるんだな。

「異空間に逃げ込めば、俺から逃げられると思ったら大きな間違いです」

そうだろうな。

ルイーシュの空間魔法は、シルナのそれより上だ。

それは俺だって分かってたけど、でもこんなに早く追ってくるとは思わなかった。

だって普段のルイーシュなら、頼まれてもそう簡単には腰を上げない。

ルイーシュの面倒臭がりは、聖魔騎士団でも有名だからだ。

「…珍しいこともあるもんだな。こんなに早く、お前がまともに仕事してるのは」

「はぁ…?何を言ってるんです。ジュリスさんを連れ去った犯人を、野放しにする訳ないでしょう」

なんてことだ。

普段のルイーシュとはかけ離れている。キュレムに聞かせてやりたい台詞。

「さぁ。観念してもらいましょうか」

「ルイーシュ…!思い出してくれ、俺達はお前の敵じゃ…!」

「無駄です。『ムシ』に侵された人間が、正気に戻ることはありません」

リューイは、無情にそう言った。

そして、俺達をルイーシュから庇うように、ルイーシュの前に立ち塞がった。

「…何なんです。あなたは」

「私は"大天使アークアンジェル"のリューイ。聖賢者殿らの…味方です」

…リューイ。

「訳が分かりませんね。あなたが俺の邪魔をすると言うのなら、相手になります」

「リューイ君…!私達も、」

と、シルナが言いかけたが。

「先に行ってください。ここは私が引き受けます」

リューイお前。そんな、誰しも人生で一度は言ってみたい台詞を、こんなところで。

そんなの俺が納得するとでも思ってるのか?

「ふざけんな、馬鹿。お前一人で…!」

「心配なさらずとも、天使は死にませんよ」

「死ななきゃ良いとか、そういう問題じゃないんだよ!」

ナジュといいお前といい、何で不死身の奴らは平気で自分の身を盾にするんだ?

いい加減にしろ。

…しかし。

「早く行ってください。あなた方には、やらなければならないことがあるんでしょう」

「…!それは…」

「だったら、ここで足を止める理由はありません」

…その通りだ。何も間違ってない。

「行って、目的を果たしてください」

「羽久…。ここは」

「…ちっ…」

シルナに視線で制され、俺はやむを得ず、リューイを置き去りにして背を向けた。

畜生。逃げることしか出来ないのかよ、俺は。

「ここは任せる。でも、絶対に戻ってこいよ、リューイ!」

「勿論です」

リューイが頷くのを見届けてから、俺達は再び、シルナの空間魔法で転移した。
< 285 / 404 >

この作品をシェア

pagetop