神殺しのクロノスタシス6
リューイがルイーシュの足止めを。
ジュリスとベリクリーデが令月とすぐりの足止めを、それぞれしてくれている間に。
俺とシルナとマシュリは、全速力でナジュのもとに急いだ。
「マシュリ、ナジュが何処にいるのか分かるか?」
「ちょっと待って。『ムシ』の匂いが強くて体臭を嗅ぎ分けにくい」
あぁ、そうなんだっけ。
俺とシルナには、全く何の匂いも感じない。
嗅ぎ分けにくいとは言いながら、マシュリはほんの数十秒程度で、
「見つけた。自分の部屋にいるみたいだね」
と、ナジュの居場所を特定してくれた。
よし、分かった。自分の部屋だな。
「近くに誰かいるか?天音とか…イレースとか」
「いや、彼らの匂いは感じない。でも…僕らが侵入してることは、多分もうバレてる」
だろうな。
学院に入った瞬間、令月とすぐりの熱烈な「歓迎」を受けてしまったのだ。
当然、あいつら全員、俺達の侵入に気づいているはず。
いつまた襲われても、おかしくない。
「学院長、羽久。君達で先に行って。僕は近くで見張ってるから」
と、マシュリ。
…分担するべきか。そうだな。
「分かった。くれぐれも気をつけて」
「分かってる」
マシュリは方向を変えて、見張りの為に姿を隠した。
残されたのは、俺とシルナの二人のみ。
目指すは、校舎内にあるナジュの部屋。
俺は容赦なく、無遠慮に、その部屋の扉を開けた。
「ナジュ!入るぞ」
「…!」
部屋の中にいたナジュは、俺とシルナの姿を見て、驚いて目を見開いていた。
…悪いな。
「あなた達は…今朝の…」
「また戻ってきたぞ。…お前らに大事な用があるんでな」
「…」
令月やすぐり、それに今朝のイレースと天音とは違って。
ナジュは、すぐに俺達に襲いかかるような真似はしなかった。
リューイ曰く、『ムシ』に精神を侵されると、本来の性格より凶暴に、好戦的になってしまうらしいが。
やはり、ナジュだけは違うようだな。
「忘れていること全部、思い出してもらうぞ」
「…あなた達は何者なんですか?何で…わざわざ危険を犯してまで、この学院に何度も忍び込むんですか」
そりゃ大事な用事があるからに決まってるだろ。
「それに…何で、リリスのことを知ってるんですか?…誰にも話したことなかったのに」
「お前の口から教えてもらったからだよ。だから知ってるんだ」
「え…?」
「お前は覚えてないかもしれないが、俺達は仲間なんだ。つい昨日まで、一緒に食堂でチョコレートを食べてた仲なんだよ」
あれ、本当に昨日のことか?
もう何年も前の出来事のように感じる。
たった半日程度で、色んなことが起こり過ぎて。
「お前らの身体の中に『ムシ』が入り込んで、記憶を消されてるだけなんだよ。思い出してくれ。俺達は仲間だったはずだろ!」
「…仲間…。記憶…?」
ナジュは困ったような、戸惑ったような表情で、頭を抑えた。
…もしかして効いてる?心臓手術しなくても、自力で『ムシ』の洗脳を解くことが出来るのでは?
ジュリスとベリクリーデが令月とすぐりの足止めを、それぞれしてくれている間に。
俺とシルナとマシュリは、全速力でナジュのもとに急いだ。
「マシュリ、ナジュが何処にいるのか分かるか?」
「ちょっと待って。『ムシ』の匂いが強くて体臭を嗅ぎ分けにくい」
あぁ、そうなんだっけ。
俺とシルナには、全く何の匂いも感じない。
嗅ぎ分けにくいとは言いながら、マシュリはほんの数十秒程度で、
「見つけた。自分の部屋にいるみたいだね」
と、ナジュの居場所を特定してくれた。
よし、分かった。自分の部屋だな。
「近くに誰かいるか?天音とか…イレースとか」
「いや、彼らの匂いは感じない。でも…僕らが侵入してることは、多分もうバレてる」
だろうな。
学院に入った瞬間、令月とすぐりの熱烈な「歓迎」を受けてしまったのだ。
当然、あいつら全員、俺達の侵入に気づいているはず。
いつまた襲われても、おかしくない。
「学院長、羽久。君達で先に行って。僕は近くで見張ってるから」
と、マシュリ。
…分担するべきか。そうだな。
「分かった。くれぐれも気をつけて」
「分かってる」
マシュリは方向を変えて、見張りの為に姿を隠した。
残されたのは、俺とシルナの二人のみ。
目指すは、校舎内にあるナジュの部屋。
俺は容赦なく、無遠慮に、その部屋の扉を開けた。
「ナジュ!入るぞ」
「…!」
部屋の中にいたナジュは、俺とシルナの姿を見て、驚いて目を見開いていた。
…悪いな。
「あなた達は…今朝の…」
「また戻ってきたぞ。…お前らに大事な用があるんでな」
「…」
令月やすぐり、それに今朝のイレースと天音とは違って。
ナジュは、すぐに俺達に襲いかかるような真似はしなかった。
リューイ曰く、『ムシ』に精神を侵されると、本来の性格より凶暴に、好戦的になってしまうらしいが。
やはり、ナジュだけは違うようだな。
「忘れていること全部、思い出してもらうぞ」
「…あなた達は何者なんですか?何で…わざわざ危険を犯してまで、この学院に何度も忍び込むんですか」
そりゃ大事な用事があるからに決まってるだろ。
「それに…何で、リリスのことを知ってるんですか?…誰にも話したことなかったのに」
「お前の口から教えてもらったからだよ。だから知ってるんだ」
「え…?」
「お前は覚えてないかもしれないが、俺達は仲間なんだ。つい昨日まで、一緒に食堂でチョコレートを食べてた仲なんだよ」
あれ、本当に昨日のことか?
もう何年も前の出来事のように感じる。
たった半日程度で、色んなことが起こり過ぎて。
「お前らの身体の中に『ムシ』が入り込んで、記憶を消されてるだけなんだよ。思い出してくれ。俺達は仲間だったはずだろ!」
「…仲間…。記憶…?」
ナジュは困ったような、戸惑ったような表情で、頭を抑えた。
…もしかして効いてる?心臓手術しなくても、自力で『ムシ』の洗脳を解くことが出来るのでは?