神殺しのクロノスタシス6
「助かるな。マシュリがいてくれると…。いつもなら、突然現れるこいつらに腰を抜かすところだが…マシュリが前もって言ってくれるから心の準備が出来る」
そうなんだ。
僕は大抵、知っている人なら、その人の体臭や足音で、姿が見えなくても誰が近づいてきたか分かるけど。
普通の人間には、それが分からないらしい。
不便だね。
「僕達って、そんなに体臭ある?」
「自分では分からないけどねー」
くんくん、と自分で自分の服の袖を嗅いでみる二人。
自分の匂いはなかなか分からないと思うよ。
僕にとっては、二人共かなり独特な匂いだから、すぐに分かるんだけど…。
でも、今日はまた一段と…。
「…土の匂いがする」
「あ、やっぱり分かる?」
「さっき水浴びしてきたから、匂いは消えたかと思ったんだけど」
水浴びくらいじゃ消えないよ。…少なくとも僕相手には。
二人には、いつもの体臭…だけではなく。
腐ったような土の匂いがする。
「土…?俺は何も感じないけど…。お前ら、何やったんだ?」
「腐葉土の匂いだよ。さっきまで園芸部の畑で、新しい土を混ぜてたんだ」
「ツキナがねー、カブを植えたいんだって」
成程。園芸部の畑の匂いだったか。
僕もたまに畑の前を通るけど、いつも青々とした植物の良い匂いがしてるよ。
同時に、何で魔導学院に園芸部が存在するのだろうと不思議に思ったものだ。
…農業学校に行った方が良かったのでは?
「…何でカブ?好きなのか?」
「ううん。特大のカブに育てて、収穫する時にアレやりたいんだって。『まだまだカブは抜けません』って」
「3人がかりで引っ張っても抜けない大きさまで育てたいんだって」
夢があるのは良いことだけど、それはさすがに無理なんじゃないだろうか。
ますます、何で魔導学院に来たんだろう。
「可愛かったなー、夢を語るツキナ。あのアホっぽいところが堪らないよ」
とのこと。
ツキナ…。園芸部の部長とは、多少面識がある。
猫の姿で、だけど。
彼女からは、いつも土の匂いと太陽の匂いがする。
「はいっ、じゃあ畑仕事の後にクッキーを食べて一服しようか。はいっ、チョコチップクッキー。はいっ」
ここぞとばかりに、チョコチップクッキーを押し付ける学院長。
それって一服のうちに入るの?
「はいっ、マシュリ君もお代わりどうぞ。はいっ、羽久も」
「またかよ。もう良いっての」
苦言を呈する羽久だが、学院長は全く気にしていない。
…今食べ終わったところだったのに、またお代わりが来てしまった。
令月とすぐりの二人は、全く気にせずポリポリとクッキーを齧っている。
…あの匂いはもうしない。
気にするようなことじゃない。多分気の所為だろう…と、その時は自分で自分を納得させたけど。
次にその匂いを感じたのは、その日の深夜だった。
そうなんだ。
僕は大抵、知っている人なら、その人の体臭や足音で、姿が見えなくても誰が近づいてきたか分かるけど。
普通の人間には、それが分からないらしい。
不便だね。
「僕達って、そんなに体臭ある?」
「自分では分からないけどねー」
くんくん、と自分で自分の服の袖を嗅いでみる二人。
自分の匂いはなかなか分からないと思うよ。
僕にとっては、二人共かなり独特な匂いだから、すぐに分かるんだけど…。
でも、今日はまた一段と…。
「…土の匂いがする」
「あ、やっぱり分かる?」
「さっき水浴びしてきたから、匂いは消えたかと思ったんだけど」
水浴びくらいじゃ消えないよ。…少なくとも僕相手には。
二人には、いつもの体臭…だけではなく。
腐ったような土の匂いがする。
「土…?俺は何も感じないけど…。お前ら、何やったんだ?」
「腐葉土の匂いだよ。さっきまで園芸部の畑で、新しい土を混ぜてたんだ」
「ツキナがねー、カブを植えたいんだって」
成程。園芸部の畑の匂いだったか。
僕もたまに畑の前を通るけど、いつも青々とした植物の良い匂いがしてるよ。
同時に、何で魔導学院に園芸部が存在するのだろうと不思議に思ったものだ。
…農業学校に行った方が良かったのでは?
「…何でカブ?好きなのか?」
「ううん。特大のカブに育てて、収穫する時にアレやりたいんだって。『まだまだカブは抜けません』って」
「3人がかりで引っ張っても抜けない大きさまで育てたいんだって」
夢があるのは良いことだけど、それはさすがに無理なんじゃないだろうか。
ますます、何で魔導学院に来たんだろう。
「可愛かったなー、夢を語るツキナ。あのアホっぽいところが堪らないよ」
とのこと。
ツキナ…。園芸部の部長とは、多少面識がある。
猫の姿で、だけど。
彼女からは、いつも土の匂いと太陽の匂いがする。
「はいっ、じゃあ畑仕事の後にクッキーを食べて一服しようか。はいっ、チョコチップクッキー。はいっ」
ここぞとばかりに、チョコチップクッキーを押し付ける学院長。
それって一服のうちに入るの?
「はいっ、マシュリ君もお代わりどうぞ。はいっ、羽久も」
「またかよ。もう良いっての」
苦言を呈する羽久だが、学院長は全く気にしていない。
…今食べ終わったところだったのに、またお代わりが来てしまった。
令月とすぐりの二人は、全く気にせずポリポリとクッキーを齧っている。
…あの匂いはもうしない。
気にするようなことじゃない。多分気の所為だろう…と、その時は自分で自分を納得させたけど。
次にその匂いを感じたのは、その日の深夜だった。