神殺しのクロノスタシス6
ともあれ。
ナジュを正気に戻すことに成功した。
それは良いとして、喜んでばかりはいられない。
こうしている今も、ジュリスとベリクリーデが、令月とすぐりを足止めしてくれているのだ。
「急いで裏門に戻ろう。ジュリス達を手助けに…」
と、言いかけたその時。
「ナジュ君!大丈夫!?」
「げっ…」
ごめん、げって言っちゃった。
異変を聞きつけたらしく、両手に剣を構えた天音が、部屋の中に飛び込んできた。
いや待て。これはむしろチャンスかもしれない。
ナジュに続いて、天音も正気に戻すチャンス。
俺達の言葉は届かなくても、ナジュの言葉なら天音も聞いてくれるかも。
「君達は今朝の…!性懲りもなく、また…!」
案の定、敵意剥き出しの天音。
「ナジュ君、そいつらから離れて!今度こそ仕留め…」
「落ち着いてください、天音さん。そして思い出してください」
「えっ…?」
記憶が戻った瞬間、俺の心を読みまくったナジュが、早速天音の説得にかかった。
頼むぞ。
「彼らは味方です。僕達、元々同じ学院の教師仲間なんですよ。こっちが学院長で、こっちが同僚の羽久さん。それからこっちが…マスコット猫です」
「えっ、猫…!?」
…今、マシュリは人間の姿だから、猫って言われても全然ピンと来ないだろうな。
でも猫なんだよ。
「何言ってるの、ナジュ君…?」
「あなたは心臓の中にいる芋虫みたいなのに、脳みそを操られてるんですよ。今取り出しますから、動かないでください」
「…近寄らないで!」
「!」
ナジュが一歩前に出ようとすると、天音は鋭く拒絶した。
「…そう、ナジュ君は敵の手に落ちたんだ。そんな得体の知れない連中に騙されて、『俺』の敵に回るんだ」
…やべぇ。
天音の声が、段々低くなっていく。
普段の天音だったら、ナジュの言葉に耳を貸すはずだ。いきなり襲いかかってなんかこないはずだ。
やっぱり、『ムシ』に性格を歪められて…。
「天音さん、トゥルーフォームが出ちゃってますよ。記憶を取り戻した後、己の黒歴史に悶絶したくないなら、即刻その口調は改めるべきです」
「『俺』は敵の言葉に耳は貸さない。君が敵の手に落ちたなら、一緒に斬り捨てるまで」
そう言って、天音は両手の剣を構えた。
天音とは思えない、凄まじい殺気である。
…ヤバい。物凄くヤバい。
「くそっ、『ムシ』のせいで…。天音がこんな…別人みたいに…!」
「ある意味で、こっちが本物って感じですけどね」
「は?」
本物って?どういう意味?
「心配しなくても大丈夫ですよ。トゥルーフォームの天音さんは、確かに強いですけど…」
「…けど?」
「読心魔法を思い出したこの僕に、恐れるものなどありません」
何故か、ナジュはドヤ顔だった。
…何だろう。なんか嫌な予感するんだけど。
ナジュを正気に戻すことに成功した。
それは良いとして、喜んでばかりはいられない。
こうしている今も、ジュリスとベリクリーデが、令月とすぐりを足止めしてくれているのだ。
「急いで裏門に戻ろう。ジュリス達を手助けに…」
と、言いかけたその時。
「ナジュ君!大丈夫!?」
「げっ…」
ごめん、げって言っちゃった。
異変を聞きつけたらしく、両手に剣を構えた天音が、部屋の中に飛び込んできた。
いや待て。これはむしろチャンスかもしれない。
ナジュに続いて、天音も正気に戻すチャンス。
俺達の言葉は届かなくても、ナジュの言葉なら天音も聞いてくれるかも。
「君達は今朝の…!性懲りもなく、また…!」
案の定、敵意剥き出しの天音。
「ナジュ君、そいつらから離れて!今度こそ仕留め…」
「落ち着いてください、天音さん。そして思い出してください」
「えっ…?」
記憶が戻った瞬間、俺の心を読みまくったナジュが、早速天音の説得にかかった。
頼むぞ。
「彼らは味方です。僕達、元々同じ学院の教師仲間なんですよ。こっちが学院長で、こっちが同僚の羽久さん。それからこっちが…マスコット猫です」
「えっ、猫…!?」
…今、マシュリは人間の姿だから、猫って言われても全然ピンと来ないだろうな。
でも猫なんだよ。
「何言ってるの、ナジュ君…?」
「あなたは心臓の中にいる芋虫みたいなのに、脳みそを操られてるんですよ。今取り出しますから、動かないでください」
「…近寄らないで!」
「!」
ナジュが一歩前に出ようとすると、天音は鋭く拒絶した。
「…そう、ナジュ君は敵の手に落ちたんだ。そんな得体の知れない連中に騙されて、『俺』の敵に回るんだ」
…やべぇ。
天音の声が、段々低くなっていく。
普段の天音だったら、ナジュの言葉に耳を貸すはずだ。いきなり襲いかかってなんかこないはずだ。
やっぱり、『ムシ』に性格を歪められて…。
「天音さん、トゥルーフォームが出ちゃってますよ。記憶を取り戻した後、己の黒歴史に悶絶したくないなら、即刻その口調は改めるべきです」
「『俺』は敵の言葉に耳は貸さない。君が敵の手に落ちたなら、一緒に斬り捨てるまで」
そう言って、天音は両手の剣を構えた。
天音とは思えない、凄まじい殺気である。
…ヤバい。物凄くヤバい。
「くそっ、『ムシ』のせいで…。天音がこんな…別人みたいに…!」
「ある意味で、こっちが本物って感じですけどね」
「は?」
本物って?どういう意味?
「心配しなくても大丈夫ですよ。トゥルーフォームの天音さんは、確かに強いですけど…」
「…けど?」
「読心魔法を思い出したこの僕に、恐れるものなどありません」
何故か、ナジュはドヤ顔だった。
…何だろう。なんか嫌な予感するんだけど。