神殺しのクロノスタシス6

羽久side

――――――…本当に、危ないところだった。

ナジュと天音を正気に戻してすぐ、急いでジュリス達のもとに駆けつけたら。

そこには、令月とすぐりに加えて、イレースまで参戦しており。

今にも、ジュリスとベリクリーデにトドメの一撃を入れようとしていた。

俺は咄嗟に時魔法で時間を止め、シルナがその魔法を強化してくれた。

更に、マシュリがその隙に、三人の身体から『ムシ』を取り出してくれた。

俺達三人のにわか連携の甲斐あって、ギリギリだけど、何とか間に合ったようだ。

俺が時魔法を解除した途端、令月達はその場に膝をついた。

「な…何?」

「どーゆうこと?これ…」

「…」

三人の視線は、床の上に注がれていた。

彼らの体内から取り出された、グロテスクな『ムシ』。

一匹でも気持ち悪いのに、三匹揃うとマジで…吐き気すら催してくる光景だ。

俺はさっきもう何度か見たから、まだマシだけど。

「…『八千歳』。何だろう。このミミズ」

「さー…?ルーデュニア聖王国には、随分でっかいミミズがいるんだね」

令月とすぐりは、興味深そうにミミズ…『ムシ』を眺めていた。

ちょっと待て、違う。ルーデュニア聖王国特有の巨大ミミズとか、そういうのじゃないから。

「…奇妙ですね。あれが体外に出た瞬間、記憶が変わりました」

こんな時でも、イレースは狼狽えることなく、冷静に状況判断。

さすがだよ。

「一体、これはどういうことです?」

「…話せば長くなるんだけどね…」

と、シルナ。

…さて、何処からどう説明したものかな…。

すると、そこに。

「おっと、もう終わりましたか」

「皆っ…大丈夫…!?」

治療を終えた、ナジュと天音が合流。

天音の回復魔法とナジュの再生能力のお陰で、胸の風穴も、切り落とされた腕の傷も塞がっていた。

…これで、全員揃ったな。

…リューイ以外は、だが。

「…良かった…」

俺は、ほっと胸をなで下ろした。

誰も俺とシルナとマシュリを襲ってこない。「お前らは何者だ」と武器を向けてくることはない。

ようやく、俺の知る仲間達が帰ってきてくれたのだ。

ホッとするなと言う方が無理だろう。

すると、すかさずナジュが俺の心を読んで、

「羽久さん。一人でホッとしてる場合じゃありませんよ。さっさと何があったのか、皆に説明してください」

と、言った。

「うっ…。わ、分かったよ…」

ちょっと感慨に耽りたかっただけだよ。

良いだろ、さっきまでずっと気を張ってたんだから。ちょっと肩の荷を下ろすくらい。
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