神殺しのクロノスタシス6
しかし。

小さな種を蒔くことさえ、私達にとっては容易ではなかった。

「…情けない。この体たらくよ」

仲間の一人が、心底呆れたように呟いた。

私は何も言い返せなかった。

その通り。

私達の目論見は、今のところ、ほとんど全て失敗に終わっていた。

私が蒔いた種は、まず、主である聖神ルデスの器を用意することだった。

聖なる神をその身に宿す、選ばれし器。

その器となり得る人間を探すのに、大変な苦労をした。

しかし、無事に器となり得る人間を見つけ、聖なる神の意識を宿すことに成功した。

いずれ時が来れば、器の中に主の力が満ち、器の人格は消え、その器に主の人格が宿る。

…はずだった。

私の目論見は外れた。

器は確かに聖神ルデスの意識を宿している。

しかし、それだけだ。

器に宿った主の意識は、宿主の人格を書き換えることまでは出来なかった。

器に宿った人格は、元の人間のままだ。

それどころか、その人格は、主の意識を宿すという本来の目的とは正反対。

裏切り者に味方し、聖なる神の力を宿していながら、その力を邪神の為に使っているのだ。

断じて許されることではなかった。

目論見が外れるどころか、もっと最悪な事態を引き起こしてしまった。

何人たりとも、聖なる神の力を私利私欲の為に使ってはならないというのに。

この大きな失敗だけではない。

私達は小さな種を蒔き、運命を引き合わせ、裏切り者シルナ・エインリーにけしかけてきた。

しかしそのどれもが、失敗に終わっていた。

私達がここまでしても、裏切り者に致命的な一撃を与えることは出来ないでいる。

認めよう。

あの裏切り者、シルナ・エインリーの力量、才覚は並大抵のものではないと。

私達もまた、考え直さねばならない。

このまま手をこまねいていることは出来ない。

その為に、私は新たな種を蒔いて…。



…しかし。



「こうなっては、やはり我々が直接手を下す他あるまい」

私の仲間の一人が、厳かに提案した。



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