神殺しのクロノスタシス6
生徒達の心臓に巣食っていた『ムシ』達。

寄生されてから時間が経っているせいか、そのサイズは、ジュリスが最初に見た親指サイズから、

ナジュや天音の赤ん坊の手首サイズを、更に超越し。

一匹一匹が、大人の握り拳くらいある。

これ、もう心臓の大きさ越えてね?

とにもかくにもキモい。そしてグロい。

そのグロい『ムシ』は、しばらくうにょうにょ蠢いていたが。

やがて、黒っぽい灰のようになって消えていった。

…ホッ。

「これで、イーニシュフェルト魔導学院の安全は取り戻した。あとは…」

残るは、聖魔騎士団の仲間達を…。

と、言いかけたその時。

「どうやら、お仲間の『ムシ』を退治したようですね」

「…!リューイ…!」

異空間でルイーシュを足止めしてくれていたリューイが、何処からともなく現れた。

お前。遅いぞ。

「なかなか戻ってこないから、心配したじゃないか…!」

「心配?時魔導師殿が、私を?」

何驚いてんだよ?

「リューイ君、無事で良かった。ルイーシュ君は…」

「ここに居ますよ」

リューイの後ろから、ルイーシュがひょこっと顔を覗かせた。

うぉっ。

「る、ルイーシュ…!お前…記憶をなくしたルイーシュか…!?」

また襲ってくるのか?そうなのか?

一瞬身構えてしまったが、ルイーシュはひらひらと両手を振った。

「大丈夫、記憶の戻ったルイーシュです」

「ほ、本当に?」

「天使様直々に、『ムシ』を取り除いてもらいましたよ。キモい芋虫みたいでした」

と、ルイーシュは顔をしかめて言った。

よ、良かった…。

「リューイ…。ルイーシュを正気に戻してくれたんだな。ありがとう…」

「…何故あなたが、私に礼を言うのです?元はと言えば、我々天使が蒔いた『種』のせいで、このような事態に陥っているのに」

「でも、それはお前の意志じゃないんだろ。仲間を助けてもらったんだから、礼を言うのは当然だ」

「…」

…そんなことより。

「学院の皆の記憶は戻した。次は、聖魔騎士団だ」

彼らの『ムシ』を取り除かないことには、枕を高くして寝られないからな。

これ以上『ムシ』がデカくなる前に、今度は彼らの身体から『ムシ』を追い出さなくては。
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