神殺しのクロノスタシス6
「記憶が戻ったなら、協力してくれるよな?ルイーシュ」

「いかにも面倒臭そうなので嫌です」

おい。

いかにも普段のルイーシュらしくて、本当に記憶が戻ったんだなと安心したけども。

そこは嘘でも、協力するところ…。

「…と言いたいところですが、キュレムさんがイモムシに洗脳されたままなんて癪ですからね。渋々ながら協力させてもらいますよ」

「おぉ…。そう来なくちゃ」

キュレムが絡むとやる気になるな、お前は。さすが相棒だ。

頼りにしてるぞ。

「だが、ここにいる全員の力を合わせたとしても、聖魔騎士団の大隊長達を相手にするのは楽じゃないぞ」

腕組みをしたジュリスが、冷静にそう言った。

…確かに…。

あいつらの実力は、俺達もよく知るところ。

イレースや天音達だって恐ろしく強力だったけど。

イレース達から『ムシ』を取り除くことが出来たのは、上手くそれぞれ分断することに成功したから。

ナジュの次に天音、その次にイレースと令月とすぐり、みたいに。

おまけに、マシュリに不意討ちしてもらったお陰というのも大きな要因。

一気に全員を、真正面から相手にするとなったら、正直勝ち目は見えない。

…しかも。

「聖魔騎士団の魔導師殿らは、既に『ムシ』に寄生されてから丸一日以上が経っています。心臓に巣食った『ムシ』は、幼体から成虫に変わっているはずです」

リューイが、更に嫌な情報を俺達に教えてくれた。

成虫…嘘だろ?

「まだ大きくなるのか。あのキモムシ…」

「成虫になったら…どうなるの?」

恐る恐るといった風に、シルナが尋ねる。

「凶暴性が増し、本来の性格より遥かに攻撃性が強くなります。我々の姿を見た途端、問答無用で襲ってくるでしょうね」

とのこと。

敵と見るや、問答無用で無差別に襲ってくるって、それもうただの賊じゃん。

怖っ…。ますます、迂闊に近寄れない。

だが、恐れている暇はない。

「ビビってる場合じゃない。何とかしないと…」

「でも…無策で突っ込んで、返り討ちに遭ったら元も子もないよ」

そ、それはそうだけど…。

一体どうすりゃ良いんだ?

ただでさえ強力な相手なのに、ますます凶暴性が増しているなら、最早俺達の手に負えなくなっている可能性も…。

だけど、悩んでる時間だって惜しいし…。

…すると。

「偵察に行ってこようか?僕と『八千歳』で」

令月が、そう提案した。

「何?」

「敵情視察は奇襲作戦の要だよ。上手くやれば、各個撃破も狙えるかもしれない」

「そ、それはそうだが…」

偵察に行けるものなら、行きたいけども。

でも、それはつまり敵の本拠地に乗り込むってことだろ?

危険過ぎる。

「『八千代』にしてはナイスアイディアだねー。俺もさんせー。ちょっと行ってくるよ」

すぐりまで。

「ちょ、ちょっと待て。そんなコンビニ感覚で偵察に行こうとするな」

絶対、そんな軽いノリで行って良い場所じゃないって。
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