神殺しのクロノスタシス6

羽久side

――――――…偵察に行った令月達が戻ってくるのを、俺はジリジリしながら待っていた。

…すると。

「ただいま」

「戻ったよー」

「あっ…お前ら…」

学院長室の窓から、偵察に行った令月とすぐり。

それから、いろり形態のマシュリが飛び込んできた。

良かった…。お前ら、無事だったか。

信用していたけど、でも、万が一のことがあったらどうしようかと、気が気じゃなかった。

「お前ら、よく戻ってきた。良かった…」

「そんなことより」

そんなことって何だよ。大事なことだろ。

「ど、どうだった?令月君、すぐり君…。シュニィちゃん達、どうしてた?」

「出陣の用意をしてた」

しゅ、出陣?

「僕ら、今すぐここから逃げた方が良いと思う」

と、令月が言った。

…何?

「どういうことだ…?何で逃げる必要がある?」

「聖魔騎士団が総力をあげて、学院に攻め込んでくるつもりらしいよ」

「…!」

…やっぱり、そうなのか。

こちらから聖魔騎士団に赴くつもりだったが、向こうから来るとは…。

…だが、それでも構わない。

「だったら、逃げる必要はない。ここで迎え撃とう。この学院は俺達のホームみたいなものだ。上手く誘導出来れば、『ムシ』を各個撃破して…」

「うん、向こうが理性を保っててくれるのなら、そーすれば良かったんだけどねー」

…理性を保ってるなら?

「すぐり…?何を…」

「どうやらあの人達、学院長せんせー達を殺す為なら、生徒を巻き込むことも厭わないつもりらしくて」

「…!」

「最悪、生徒ごと校舎を爆破しかねないよ。あの勢いなら」

…なんてことだ。

俺もシルナも、顔が真っ青になった。

まさか…シュニィ達が、そんな過激な作戦を立てるなんて…。

普段のシュニィだったら有り得ない。いくら『ムシ』に支配されているとはいえ…。

生徒を犠牲にしても構わない、なんて…。

「…生徒を巻き込む訳にはいかないね」

「あぁ…」

親御さんから預かっている大事な生徒に、傷一つつける訳にはいかない。

シュニィ達が、生徒を巻き込むこと前提で攻め込んでくるつもりなら…。

「すぐに、ここを離れよう。学院が戦場になる前に…」

「…そうだな」

生徒を巻き込まないようにする為には、そうするしかない。

折角学院を取り戻したのだから、ここを拠点に『ムシ』退治をしようと思っていたのに…。

まさか、また学院を出ていく羽目になるとはな。
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