神殺しのクロノスタシス6
これでもし、珠蓮までもが『ムシ』に侵されていて、協力を拒まれたら、さすがにこれ以上打つ手はなかったが。

ルーデュニア聖王国から遠く離れた場所を旅していた珠蓮に、『ムシ』の影響は及んでいなかった。

マシュリの指輪…賢者の石の欠片…を通信機代わりに、シルナは珠蓮に呼びかけた。

詳しく説明している暇はなかった。

こうしている間にも、出撃の準備を整えた聖魔騎士団魔導部隊一行が、この学院に攻め込んでくるかもしれないのだ。

「詳しい事情は話せないけど、君の力を貸して欲しい」という、シルナの無茶苦茶な訴えに。

珠蓮はただ一言、「分かった」とだけ答えた。

この珠蓮の男気よ。

さてはイケメンか?あいつは。

そして、すぐさまイーニシュフェルト魔導学院に駆けつけてくれた。

「珠蓮君…。久し振りだね…」

「あぁ。…出来れば、思い出話に花を咲かせたいところだが…。そんなことをしている余裕はないんだろう?」

「うっ…」

…よく分かってらっしゃる。さすが珠蓮。

って、そりゃ分かるか。突然呼び出したんだから。

緊急の要件だってことは、珠蓮も承知の上で駆けつけてくれたのだろう。

「それで、俺は何をすれば良い?」

「本当にごめんね、珠蓮君…。実は今、聖魔騎士団の仲間達と敵対関係になってて…」

「…それから?」

「この後、彼らがこの場所に攻めてくる。生徒を巻き込むことも厭わない覚悟で」

「…つまり、俺は賢者の石を使って、聖魔騎士団の攻撃を止めれば良いんだな?」

話が早い。なんて物分かりの良さ。

「生徒に被害が及ばないようにしたいんだ。それから、洗脳されている聖魔騎士団の仲間達を救いたい」

賢者の石を使って魔法を封じれば、魔導師であるシュニィ達は、手も足も出ない。

我ながら卑怯な作戦だが、生徒を守る為にはこうするしかない。

「分かった。協力しよう」

「ありがとう、珠蓮君…!本当に、なんてお礼を言ったら良いか…」

「礼を言うのは、目的を達成してからにしたらどうだ?」

…全くだな。

じゃあ、この後無事に、シュニィ達を正気に戻すことが出来たら。

学院メンバー、聖魔騎士団メンバー総出で、珠蓮にお礼言いまくるってことで。

よろしく。
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