神殺しのクロノスタシス6
非常に頼もしい助っ人が来てくれて、ホッとしたのも束の間。

「来たみたいだよ。お客さん」

マシュリが、真っ先に気配を察知した。

げっ…。

「来たか…!」

作戦会議する暇もないな。

しかも、学院の敷地内に踏み込んでくるなり。

ご挨拶とばかりに、キュレムの長距離魔弾砲撃が飛んできた。

ひぇっ…。

先制パンチと言わんばかり。

「容赦のない一撃ですね。…キュレムさんらしくもない」

キュレムの放った魔弾を、相棒であるルイーシュが異空間にすっ飛ばした。

危ねっ…!

なんてことするんだ。生徒や建物への被害を全然考慮に入れてない。

「…人質に取ったジュリスさんとルイーシュさんを、返してもらいますよ」

挑んできたシュニィは、普段の彼女らしからぬギラギラした目をしていた。

やべぇ…。いつもは美人なのに、殺気立ってると美人が台無しだぞ。

なんて、アトラスに言ったら殴られそうだが。

「勝手に人質扱いすんじゃねぇ。お前ら、いい加減目を覚ませ」

「キュレムさん。あなた心臓の中にイモムシ居るんですよ。取ってあげますからそこ、動かないでください」

正気に戻ったジュリスとルイーシュが、聖魔騎士団の仲間達に呼びかけたが…。

「はぁ?…何ふざけたこと言ってやがる」

逆ギレのキュレム。…ですよねー。

無駄だ。『ムシ』に身体を乗っ取られている以上、いくら呼びかけても俺達の声は届かない。

「こんなに聞き分けがないとは…。皆さん反抗期ですね」

冗談言ってる場合じゃないぞ。ルイーシュ。

「ジュリスさんとルイーシュさんを丸め込んだようですね。どんな汚い手を使ったのか…」

「…シュニィちゃん…」

「そちらがその気なら、こちらも多少手荒な真似をしても文句は言えませんね」

いや、ハナから手加減してくれる気なんかないだろ。

と思っていたら、シュニィは本当に容赦なかった。

豊富な魔力量に物を言わせた、凄まじい魔力の爆弾を生成。

「シュニィ…!?あいつ…!」

嘘だろ。あれ、本気でこっちに投げつけるつもりなのか。

さすがに脅しのつもりじゃないか、と信じたかったが。

「…どうやら彼女、本気らしいですよ」

「マジかよ…!?」

シュニィの心を読んだナジュが、無情にそう教えてくれた。

…そうか。本気で。

校舎を爆破してでも、生徒を巻き込んででも、何なら助けに来たはずのジュリスやルイーシュに危害が及んでも。

それで俺とシルナ、それからベリクリーデを始末出来るのなら、やる。

なんて恐ろしい。『ムシ』のせいで、その程度の判断さえ出来なくなっているのか。

戦慄するところだな。

…こちらに、珠蓮が居なかったら、の話だが。
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