神殺しのクロノスタシス6
やっぱり気の所為なんかじゃない、と確信した。
はっきりと、その匂いを感じたのだ。
匂いの元は…校舎の方から…いや、校舎の裏の方から漂っていた。
一瞬、僕は逡巡した。
行くべきか。それとも行かないべきか?
明日にした方が良いんじゃないか。明日の朝になって、学院長や羽久達に相談してから…。
「…」
…でも、いくら説明したとしても、彼らにはこの匂いが分からない。
それに…彼らは今、僕のせいで既に充分、いくつもの厄介事を抱えているのだ。
僕が解決出来ることなら、彼らに頼らず一人で解決したかった。
「…」
僕は窓枠に足を乗せ、窓の外に飛び降りた。
もし危険を感じたら、すぐに逃げれば良い。
逃げ足の速さはピカイチだと自負している。
僕は匂いの元を辿って、暗闇の中を走った。
段々と、匂いが強くなってきた。
本当に、この匂いは何なんだろう。
これまで嗅いだことがない。冥界でも、現世でも。
生き物の匂いなのか。それとも植物か何かなのか?
そして、何故こんな不可思議な匂いが、このイーニシュフェルト魔導学院にあるのか。
「…ここだ…」
その答えは、校舎裏にある…。
…園芸部の畑にあった。
「…」
…何で、畑?
匂いに導かれるまま、真っ直ぐに走ってきたけど…。
園芸部の畑には、様々な野菜や果物が植えられていた。
よく手入れしているのだろう。水分をたっぷりと含んだ、青々とした植物の匂いがする。
でも…その植物の匂いを妨げるように、強い刺激臭が漂っていた。
その匂いの元は、植物ではなくて…。
僕はその場にしゃがんで、畑の土に顔を押し付けるようにして匂いを嗅いだ。
ここだ。匂いの元。畑の土。
昼間、令月とすぐりが言ってた。畑の土に腐葉土を混ぜた…って。
強い腐葉土の匂いに混じって、その中から土以外のものの匂いがした。
やっぱり、間違いない。
僕は畑の土を一握り掴んで、暗闇の中でじっと目を凝らした。
すぐには見えなかった。
しばし目を凝らして、そして土の中に無数に蠢くものを見つけた。
「…!これ…」
恐らく今、僕の目は猫のように吊り上がっていたことだろう。
人間の目には見えない。虫眼鏡を使っても、多分を見えないだろう。
顕微鏡か何かを持ってきて覗けば、ようやく見えるんじゃないだろうか。
それくらい、小さいモノだった。
僕が獣の血を引いているから、肉眼で見えるだけで…。
一度気づいてしまえば、はっきりと見える。
この匂いだったんだ。猫缶から漂っていたもの、学院長のクッキーから漂っていたもの…。
そして今、こうして園芸部の畑に大量に混ぜられている。
「…不味い…」
非常に不味い事態だ。
何処からこんなものが。一体どうやって。
学院の中まで浸食されているということは、既にルーデュニア聖王国全土に広がっている可能性が高い。
止めなければ。今、すぐに。
恐らくこれが、ナツキ皇王の言う次の矢、
「…困りますね。邪魔をされては」
暗闇の中に、知らない誰かの声が響いた。
はっきりと、その匂いを感じたのだ。
匂いの元は…校舎の方から…いや、校舎の裏の方から漂っていた。
一瞬、僕は逡巡した。
行くべきか。それとも行かないべきか?
明日にした方が良いんじゃないか。明日の朝になって、学院長や羽久達に相談してから…。
「…」
…でも、いくら説明したとしても、彼らにはこの匂いが分からない。
それに…彼らは今、僕のせいで既に充分、いくつもの厄介事を抱えているのだ。
僕が解決出来ることなら、彼らに頼らず一人で解決したかった。
「…」
僕は窓枠に足を乗せ、窓の外に飛び降りた。
もし危険を感じたら、すぐに逃げれば良い。
逃げ足の速さはピカイチだと自負している。
僕は匂いの元を辿って、暗闇の中を走った。
段々と、匂いが強くなってきた。
本当に、この匂いは何なんだろう。
これまで嗅いだことがない。冥界でも、現世でも。
生き物の匂いなのか。それとも植物か何かなのか?
そして、何故こんな不可思議な匂いが、このイーニシュフェルト魔導学院にあるのか。
「…ここだ…」
その答えは、校舎裏にある…。
…園芸部の畑にあった。
「…」
…何で、畑?
匂いに導かれるまま、真っ直ぐに走ってきたけど…。
園芸部の畑には、様々な野菜や果物が植えられていた。
よく手入れしているのだろう。水分をたっぷりと含んだ、青々とした植物の匂いがする。
でも…その植物の匂いを妨げるように、強い刺激臭が漂っていた。
その匂いの元は、植物ではなくて…。
僕はその場にしゃがんで、畑の土に顔を押し付けるようにして匂いを嗅いだ。
ここだ。匂いの元。畑の土。
昼間、令月とすぐりが言ってた。畑の土に腐葉土を混ぜた…って。
強い腐葉土の匂いに混じって、その中から土以外のものの匂いがした。
やっぱり、間違いない。
僕は畑の土を一握り掴んで、暗闇の中でじっと目を凝らした。
すぐには見えなかった。
しばし目を凝らして、そして土の中に無数に蠢くものを見つけた。
「…!これ…」
恐らく今、僕の目は猫のように吊り上がっていたことだろう。
人間の目には見えない。虫眼鏡を使っても、多分を見えないだろう。
顕微鏡か何かを持ってきて覗けば、ようやく見えるんじゃないだろうか。
それくらい、小さいモノだった。
僕が獣の血を引いているから、肉眼で見えるだけで…。
一度気づいてしまえば、はっきりと見える。
この匂いだったんだ。猫缶から漂っていたもの、学院長のクッキーから漂っていたもの…。
そして今、こうして園芸部の畑に大量に混ぜられている。
「…不味い…」
非常に不味い事態だ。
何処からこんなものが。一体どうやって。
学院の中まで浸食されているということは、既にルーデュニア聖王国全土に広がっている可能性が高い。
止めなければ。今、すぐに。
恐らくこれが、ナツキ皇王の言う次の矢、
「…困りますね。邪魔をされては」
暗闇の中に、知らない誰かの声が響いた。