神殺しのクロノスタシス6
リューイside
――――――…皆が無事で良かった、か。
聖賢者殿は、『ムシ』に洗脳された仲間達が自分に襲いかかってきたことについて、一切彼らを責めなかった。
むしろ、洗脳が解けたことを素直に喜んでいた。
私には不思議でならない。
彼ら自身は、全く気づいていないようだが。
仲間達の身体の中に『ムシ』が巣食っているという話を、私から聞かされて。
彼らは一度も、「だったら殺そう」とは言わなかった。
『ムシ』ごと宿主である人間を殺してしまえば、それが一番手っ取り早い解決方法だった。
誰でも思いつく、簡単な方法のはずだった。
それなのに彼らは、一度としてその方法を口にしなかった。思いついてもいないようだった。
聖賢者殿は最初から、あくまで、仲間を助ける方法を考えていた。
それがどれほど困難な道だろうと、自分の身を危険に晒そうとも。
聖賢者殿は一貫して、何とか仲間を助ける手段を模索し、そしてその方法を見つけ。
こうして、見事仲間達全員を、正気に戻したのである。
しかも、助けてやった仲間達に対して、一切恩着せがましく振る舞うことはなかった。
聖賢者殿の顔は、ただただ、心から安心したようで。
仲間が無事で良かった、助けることが出来て良かった。彼の中にあるのはそれだけだった。
これが、嘘偽りのない、聖賢者殿の本当の姿。
…智天使様が何故、私に聖賢者殿を観察するよう頼んだのか。
今らなら、その理由が分かる気がした。
この男は、確かに罪人だが。
しかし、決して悪人ではない。
ならば…まだ、救いはあるはずだ。
「…」
無事に仲間を取り戻した喜びに湧く、聖賢者殿達をしばし、じっと見つめ。
私は、彼らに気づかれないようにそっと姿を消した。
今も私の目を通して、聖賢者殿を見ている智天使様のもとに戻る為に。
聖賢者殿は、『ムシ』に洗脳された仲間達が自分に襲いかかってきたことについて、一切彼らを責めなかった。
むしろ、洗脳が解けたことを素直に喜んでいた。
私には不思議でならない。
彼ら自身は、全く気づいていないようだが。
仲間達の身体の中に『ムシ』が巣食っているという話を、私から聞かされて。
彼らは一度も、「だったら殺そう」とは言わなかった。
『ムシ』ごと宿主である人間を殺してしまえば、それが一番手っ取り早い解決方法だった。
誰でも思いつく、簡単な方法のはずだった。
それなのに彼らは、一度としてその方法を口にしなかった。思いついてもいないようだった。
聖賢者殿は最初から、あくまで、仲間を助ける方法を考えていた。
それがどれほど困難な道だろうと、自分の身を危険に晒そうとも。
聖賢者殿は一貫して、何とか仲間を助ける手段を模索し、そしてその方法を見つけ。
こうして、見事仲間達全員を、正気に戻したのである。
しかも、助けてやった仲間達に対して、一切恩着せがましく振る舞うことはなかった。
聖賢者殿の顔は、ただただ、心から安心したようで。
仲間が無事で良かった、助けることが出来て良かった。彼の中にあるのはそれだけだった。
これが、嘘偽りのない、聖賢者殿の本当の姿。
…智天使様が何故、私に聖賢者殿を観察するよう頼んだのか。
今らなら、その理由が分かる気がした。
この男は、確かに罪人だが。
しかし、決して悪人ではない。
ならば…まだ、救いはあるはずだ。
「…」
無事に仲間を取り戻した喜びに湧く、聖賢者殿達をしばし、じっと見つめ。
私は、彼らに気づかれないようにそっと姿を消した。
今も私の目を通して、聖賢者殿を見ている智天使様のもとに戻る為に。