神殺しのクロノスタシス6
私は焦っていたのかもしれない。

これ以上、私達が蒔いた「種」が芽吹く前に。

この二人を、何とか説得して手を引かせなければならない、と。

だからこそ、焦りのあまり判断を誤ってしまった。

セラフィムとソロネを言葉で説得出来る、なんて思ってしまった。

私の裏切りに激怒した二人が、どのような行動に出るか…。

少し考えれば、予想することだって出来たはずなのに。

「…智天使ケルビム。貴様は三大天使として相応しくない」

「…待ってください、私は…!」

「少し、ここで頭を冷やしてくるが良い。その間に、裏切り者のシルナ・エインリーは、我らが裁きを下す」

「…!」

セラフィムは、太く、長い鎖を手にしていた。

あれは…グレイプニルと呼ばれる、あらゆるものを縛り、封印する為の鎖。

あの鎖に囚われれば、例え天使であろうとも、一歩も動くことは出来ない。

…不味い。

セラフィム達がこのような強硬手段に出ると、予測出来なかった私の判断ミスだった。

だが、時は既に遅い。

自分の判断の甘さを猛烈に後悔しながら、それでも私は、鎖に囚われるまでの僅かな時間で、自分に出来ることを考えた。

今私に出来ることは。

「リューイ…!お願いです、彼らを…!」

「…智天使様…!」

「行ってください、早く!」

「…っ!」

僅かに躊躇ってから、それでもリューイは、踵を返して地上に向かって飛んだ。

ありがとう、リューイ。…どうかお願いします。

…今の私に出来ることは、これだけだ。

私の忠実な味方に、私の意志を託すこと。

そして。






…どうか、彼らが無事でありますようにと祈ることだけだった。

セラフィムが放ったグレイプニルが、私の両手両足を拘束した。








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