神殺しのクロノスタシス6
それが、主の望みに添わないことでも。

リューイは誰の為でもなく、自分の為に、智天使を救うことを望んだ。

「お願いします。智天使様をお救いするのに、皆さんの力を貸してください」

「リューイ…」

…まさか、マシュリを殺した奴…の、手先に、力を貸してくれと頭を下げられることになるとはな。

分からないものだ、人生ってのは。

…少し前までの俺だったら、「ふざけんな」と一蹴していただろうな。

だけど、今は違う…。

「頭を上げて、リューイ君。当然だよ」

まず真っ先に、シルナがそう言った。

「聖賢者殿…」

「君のご主人様は、私を庇おうとしてくれて捕まったんでしょう?だったら、私が助けるのは当然のことだよ」

…そう言うと思った。シルナなら。

お前はいつだってそうだよ。困ってる人を見かけたら、どんな理屈をつけてでも助けなきゃいられない。

そんなシルナだから、自然と周りに仲間が増えていくんだ。

「…ありがとうございます、聖賢者殿」

それが、神に反旗を翻す行為であることは分かっている。

でも、それは今更だろう?

仲間を助ける為なら、例えどんなに危険なことでも、神に反旗を翻す行為でも、関係ない。

俺達はずっと、そうやって生きてきた。

これまでも、これからもだ。
< 327 / 404 >

この作品をシェア

pagetop