神殺しのクロノスタシス6
どうしたんだ?…突然…。

何を見たって…冥界で、ってことか?

「何を…って言われても、俺にはさっぱり分からないような場所だったけど…」

「具体的には?」

具体的?

「えぇと…。俺とベリクリーデが辿り着いたのは、捨てられた古代都市みたいな場所だったぞ」

「…古代都市…ですか」

「あぁ。遺跡みたいな場所で…。骨がたくさん捨てられてた。色んな意味で不気味な場所だったよ」

あの時はシルナとはぐれていたから、余計にな。

それに比べりゃ、今は隣にシルナがいるし、リューイも令月もすぐりもいるし。

例え襲いかかられたとしても、山賊は魔物じゃなくて、人間だ。

そう思うと、何だかヌルゲーのような気がしてきたぞ。

「…聖賢者殿は?」

「ほぇっ?」

「覚えていますか。冥界に行った時のことを」

「そ、そりゃ覚えてるよ…。凄く怖かったんだもん。お墓で…」

リューイに質問されて、シルナはびくびくしながら答えた。

お墓って。

「何のお墓か分からないけど…。数字みたいなのが刻まれてて、凄く不気味だったんだから。ジュリス君がいなかったら、腰を抜かしていただろうよ」

シルナはビビりだもんな。

きっと、今みたいに過剰にビビって、ジュリスに迷惑かけてたんだろう。

申し訳なくなってきた。

「墓…。…墓を暴いたりはしませんでしたか?」

「あ、当たり前だよ!あんな怖いお墓、掘り返したら何が出てくるか…」

ビビリチキンのシルナに、墓を暴く度胸があるものか。

俺だって嫌だよ。死者の眠りを妨げたら、一体どんな目に遭わされるか。

「…では、そちらのお二人は?」

今度は、令月とすぐりに尋ねた。

「何で、そんなこと聞くの?」

「お気になさらず。ただの興味本位です」

「ふーん…。僕は魔物の胃の中だったよ」

…胃の中。

改めて思い返すと、よく逃げ出せたもんだ。

「俺は無人島でさー。謎の研究所みたいな場所を彷徨ってたね」

…無人島。

こちらまた、よく脱出出来たな。

マシュリの案内がなければ、どうなっていたか…。

リアル無人島脱出をしなければならないところだっただろう。

「そうですか。皆さん、様々な…バラバラの場所を彷徨っていたのですね」

「そうみたいだな…」

辿り着いた場所は、それぞれ別々の、多種多様な魔境だったが。

「全員、人骨みたいな骨を見つけたのと…魔物に襲われて、マシュリに導かれて竜の祠に辿り着いたってことは、共通してるな」

「…人骨…。魔物、ですか…」

「まぁ、魔物の闊歩する冥界だからな。人骨くらい、その辺に落っこちてる小石や小枝みたいなもんだ」

そう思ったら、ますます、この山道は大したことないように思えるな。

ちょっと勇気が湧いてきた。…ような気がする。

…気がするってことにしておこう。

「…そうですか…。皆さん…アレを見て…」

「…リューイ?」

アレって何のこと、と聞こうとしたその時。

突然、先頭を歩いていた令月とすぐりが、足を止めた。
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