神殺しのクロノスタシス6
「な、何だ?どうした…?」

「…来たね、『八千歳』」

「うん。お客さんだねー」

お、お客さん?

ちょっと、二人で勝手に納得しないでくれ。俺達にも分かるように説明、

「ひぇっ…!」

しかし、説明の必要はなかった。

怯えたシルナが、俺の背中に隠れていた。

おい、俺を盾にするな。

いつの間にか、俺達の四方を塞ぐように、粗末な身なりの屈強な男達が取り囲んでいた。

それぞれ武器を手に、にやにやと笑いながら。

やべぇ…。マジで、ザ・山賊みたいな…。

「お前ら、ここが何処か知ってここに入ってきたんだろうな?」

山賊のボスっぽい男が、挑発的に聞いてきた。

…知ってるよ。

でも、他に皇都に向かうルートがないから、仕方なく入ってきたんだよ。

お宅らの縄張りを荒らすつもりはないんだ。…本当にな。

「随分良い身なりじゃないか。…久々に格好のカモが来やがった」

「ひ、ひぇぇ〜っ!シルナは美味しくないよー!」

シルナがうるせぇ。

イーニシュフェルト魔導学院の学院長ともあろう者が、異国の山賊にビビるんじゃねぇよ。情けない。

「俺達は、ただ皇都に向かいたいだけなんだ」

こういうのは、怯えているのがバレたら、徹底的に付け入られるからな。

嘘でも、怯えてないフリをしなくては。

俺は努めて冷静な口調を装って、山賊達との対話を試みた。

マシュリが言ってたじゃないか。山賊にも色々種類があると。

タチの悪いパターンもあるが、金目のものを素直に渡したら見逃してくれる、話の分かる山賊もいると…。

だったら、俺はその可能性に賭ける。

俺達の目的はハクロとコクロの二人であって、アーリヤット皇国の山賊退治ではないのだ。

こんなところで目立ちたくない。

「お前らと争いたくない。ここは見逃してくれないか?」

「そうだな…。見逃して欲しけりゃ、払うもん払っていきな」

まぁ、タダでは通らせてくれないよな。

橋を渡りたきゃ通行料、ってな。

「分かった。いくら払えば良い?」

手持ちの金額でどうにかなるなら、素直に支払って平和的に解決、

「お前らは五人だからな…。一人1000万、しめて5000万払っていきな」

法外。

吹っ掛けるにも程があるだろ。

「ご、5000万円…。板チョコ何枚分…?」

これには、シルナもびっくり。

…何枚分だろうな、板チョコ。

「板チョコを一枚100円だとして、50万枚ほどですね」

リューイも、律儀に答えなくて良いっての。

「ご、50万枚の板チョコ…!」

「総カロリーは約200000000カロリーですね。これは一般的な成人男性が一日に摂取するカロリーのじゅうま、」 

「ひぇぇぇ!」

「板チョコの話はもう良いっての!」

そんな呑気な話してる場合か?なぁ。

気が抜けるからやめてくれ。
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