神殺しのクロノスタシス6
マシュリさん曰く。
この国境付近の街から、直接皇都に向かう列車はないそうだ。
列車を乗り継いで、まずは皇都に向かう大きな中継都市を目指し。
そこから改めて、皇都行きの列車に乗り換える必要がある。
成程、二度手間ですね。
おまけに、この辺境の都市だと、列車の数もそんなに多くない。
一日に二本。午前と午後にそれぞれ一本ずつという有り様。
うーん。普段ルーデュニア聖王国王都セレーナに住んでいる身としては。
半日に一本の列車と聞くと、やはり田舎感が否めない。
午前の列車は既に発車してしまっているので、次は午後の便を待たなければならない。
「もどかしいね…。こうしている間にも、山越え組は少しずつ前に進んでるんだろうに…」
駅構内のベンチに座って待ちながら、天音さんが呟いた。
まぁ、それは仕方ないですね。
列車の辛いところですよ。
徒歩組は足こそ遅いものの、立ち止まらない限りは、着実に前に進むことが出来る。
一方列車組は、列車に乗り込みさえすれば速いものの、運行時間になるまで、駅から一歩も動けない。
声をかけられたらおしまい、という状況で、一箇所に留まっているのは、精神的にキツいものがある。
こうしている間にも、僕達のことを怪しんで見ている人がいるんじゃないか…って。
こういう時は、近くにいる人全員が、自分を盗み見てるんじゃないかと錯覚するものだ。
「…」
僕はさり気なく視線を周囲に向けて、近くにいる人々の心を読んだ。
彼らの心の中にあるのは、ありふれたつまらない事柄ばかりだった。
近くに座っている出張中の社会人っぽい男性は、書類を確認しながら、この後会社で行われる会議の内容を予習している。
反対側に座っている、旅行中っぽいおばさん二人組は、旅行の思い出話に夢中。
あちらの改札の向こうにいる駅員さんなんて、こちらを注視するどころか。
「あーダルい。早く帰ってビールでも飲みたいなぁ」なんて考えている。
皆が自分を見ているかもしれないなんて、それは僕らの自意識過剰というものですね。
誰も、こちらに注意を向ける人なんていません。
「良かったですね。誰もこちらに注意を向けていませんよ」
「ほ、本当?」
「ただ、向こうのOLっぽい女性は、『猫なんて連れてくるなよ』って思ってるようですが…」
「…好きで猫じゃないのに…」
マシュリさんが落ち込んでた。これは仕方ない。
世の中の人間が、皆猫好きだと思ったら大きな間違い。
キャリーケースに入れてるので許してください。
「こちらに注意を向けている人間がいないのは良いことですが、さすがにずっと一箇所に留まっているのは望ましくありませんね」
と、イレースさんが言った。
…そうですね。こうして座って待ってたら、嫌でも周囲の目に晒される訳で…。
ましてや僕ら、猫を連れているせいで、ちょっと目立っちゃってますもんね。
「列車が来るまで、少し駅の外を見て回ってみようか」
列車が来るまでの暇潰しも兼ねて。
天音さんの提案に従って、僕達は少し、駅の周囲を見て回ることにした。
この国境付近の街から、直接皇都に向かう列車はないそうだ。
列車を乗り継いで、まずは皇都に向かう大きな中継都市を目指し。
そこから改めて、皇都行きの列車に乗り換える必要がある。
成程、二度手間ですね。
おまけに、この辺境の都市だと、列車の数もそんなに多くない。
一日に二本。午前と午後にそれぞれ一本ずつという有り様。
うーん。普段ルーデュニア聖王国王都セレーナに住んでいる身としては。
半日に一本の列車と聞くと、やはり田舎感が否めない。
午前の列車は既に発車してしまっているので、次は午後の便を待たなければならない。
「もどかしいね…。こうしている間にも、山越え組は少しずつ前に進んでるんだろうに…」
駅構内のベンチに座って待ちながら、天音さんが呟いた。
まぁ、それは仕方ないですね。
列車の辛いところですよ。
徒歩組は足こそ遅いものの、立ち止まらない限りは、着実に前に進むことが出来る。
一方列車組は、列車に乗り込みさえすれば速いものの、運行時間になるまで、駅から一歩も動けない。
声をかけられたらおしまい、という状況で、一箇所に留まっているのは、精神的にキツいものがある。
こうしている間にも、僕達のことを怪しんで見ている人がいるんじゃないか…って。
こういう時は、近くにいる人全員が、自分を盗み見てるんじゃないかと錯覚するものだ。
「…」
僕はさり気なく視線を周囲に向けて、近くにいる人々の心を読んだ。
彼らの心の中にあるのは、ありふれたつまらない事柄ばかりだった。
近くに座っている出張中の社会人っぽい男性は、書類を確認しながら、この後会社で行われる会議の内容を予習している。
反対側に座っている、旅行中っぽいおばさん二人組は、旅行の思い出話に夢中。
あちらの改札の向こうにいる駅員さんなんて、こちらを注視するどころか。
「あーダルい。早く帰ってビールでも飲みたいなぁ」なんて考えている。
皆が自分を見ているかもしれないなんて、それは僕らの自意識過剰というものですね。
誰も、こちらに注意を向ける人なんていません。
「良かったですね。誰もこちらに注意を向けていませんよ」
「ほ、本当?」
「ただ、向こうのOLっぽい女性は、『猫なんて連れてくるなよ』って思ってるようですが…」
「…好きで猫じゃないのに…」
マシュリさんが落ち込んでた。これは仕方ない。
世の中の人間が、皆猫好きだと思ったら大きな間違い。
キャリーケースに入れてるので許してください。
「こちらに注意を向けている人間がいないのは良いことですが、さすがにずっと一箇所に留まっているのは望ましくありませんね」
と、イレースさんが言った。
…そうですね。こうして座って待ってたら、嫌でも周囲の目に晒される訳で…。
ましてや僕ら、猫を連れているせいで、ちょっと目立っちゃってますもんね。
「列車が来るまで、少し駅の外を見て回ってみようか」
列車が来るまでの暇潰しも兼ねて。
天音さんの提案に従って、僕達は少し、駅の周囲を見て回ることにした。