神殺しのクロノスタシス6
田舎の駅だけあって、駅の周囲も静かなのだが…。

国境に近い駅だからか、ちらほらとお土産物のお店が並んでいた。

ふむ。小道具に使えるかもしれませんね。

「よし。お土産買っていきましょうか。天音さん、どれにします?」

「え。お土産?」

遊びに来たんじゃないってことは分かってますよ。勿論。

でも、

「旅行者を装うなら、お土産の一つや二つ持っているのが自然というものでしょう?」

「あ、そうか…。確かに。それじゃあ僕も…」

僕達は、適当に目についたお土産を購入した。

お菓子の箱をいくつかと、キーホルダーとか…。

「見てください天音さん。アーリヤット皇国Tシャツなんて売ってますよ」

「えっ…。あ、あれはちょっと…逆に目立つんじゃないかな…?」

「面白そうですね。ちょっと買ってきます」

ご当地Tシャツ。なんだか集めたくなりません?

えぇと、サイズはMで良いかな。

「はい、天音さんどうぞ」

「えっ、僕っ…?」

買ってきたアーリヤットTシャツを、早速天音さんに押し付け、いや、プレゼントした。

「きっと天音さんに似合うと思いますよ。どうぞ」

「え、えぇ…。あ、ありがとう…?」

何で疑問形なんですか?
 
しかし、お土産物のお店を見て回るのって、結構楽しいですね。

旅行に来たんじゃないのに、何だか旅行気分になれる。

すると、そんな僕の浮ついた気分を察したらしく。

「あなた達、旅行を満喫してるんじゃありませんよ。本題を忘れてるんじゃないでしょうね」

イレースさんが、すかさず釘を刺した。

おぉっと、イレースさん、さすが分かってますね。

「うっ…。だ、大丈夫だよ。ちゃんと分かってるよ…」

「勿論ですよ。遊んでるように見えるかもしれませんが、ばっちり任務を果たして…。…おっ、天音さん、向こうにベーグルサンドを売ってるお店がありますよ。行ってみましょう」

「ナジュ君…。何だか楽しんでない…?」

気の所為ですよ、気の所為。

ほら、旅行者を装うなら、多少はしゃいでた方が自然に見えるでしょう?
< 348 / 404 >

この作品をシェア

pagetop