神殺しのクロノスタシス6
さて、腹ごなし兼、暇潰しも済んだので。

そろそろ、切符を買って、列車に乗る準備をしましょうか。

現状、普通にアーリヤット旅行を楽しんでる感じになっちゃってますね。

こうしている間にも、学院長や羽久さん達は、山賊の恐怖に怯えているのだろうか。

…何だか申し訳なくなってきましたね。

このまま、快適に皇都まで向かいたいものである。

長い待ち時間の果てに、ようやく午後の列車が駅構内にやって来た。

その列車に乗り込んで、空いているボックス席に着席。

そのまましばらく待っていると、アナウンスが流れ、ゆっくりと列車が動き出した。
 
お、ようやく進み始めましたね。

「やっと動いた…。一安心だね」

「そうですね」

待機時間が長かっただけに、ようやく動き出すと安心しますね。

これで、前に進むことが出来る。

動き始めたら速いですよ。列車は。

あとは、列車が自動的に僕達を運んでくれる。
 
…しかし、ホッとしてばかりはいられない。

「油断は禁物ですよ。これで私達は、この列車に閉じ込められたも同然なのですから」

「うっ…」

気が緩んでいた天音さんは、思わず身を竦ませた。

恐ろしいこと言いますねー、イレースさんは。

まぁ、その通りなんですけど。

山越えルートと違って、列車の中に閉じ込められた僕らは。

この列車が何処かの駅に停まるまで、列車の中に拘束されたも同然なのだ。

いやはや。恐ろしい旅じゃありませんか。

「挙動不審は駄目ですよ、天音さん。堂々としてないと怪しまれます」

「わ、分かってる…。気をつけるよ…」

とか言いながら、きょろきょろと視線が泳いでいる。

どうやら、余程緊張しているようですね。

「大丈夫ですよ、天音さん。そんなに緊張しなくても」

「そ、それは分かってるけど…」

「どうしても演技出来ないなら、寝ているフリでもしていなさい」

イレースさん、ナイスアドバイス。

「あ、そ、そっか…。それじゃ…」

天音さんは窓際にもたれて、いかにも「旅行疲れで寝てます」といった風に、目を閉じた。

うーん。大根役者。

まぁでも、及第点ということで。

僕は窓の外を眺めて、景色を楽しんでいる風に装い。

イレースさんは、小道具として先程駅の近くで買ってきた、アーリヤット皇国の新聞を開いて読んでいた。

この人の堂々とした態度と言ったら。

何処からどう見ても、普通のアーリヤット人女性にしか見えませんね。
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