神殺しのクロノスタシス6
そのまま何事もなく、一行は無事に、皇都に向かう中継都市に辿り着いた。

その頃には、すっかり日が暮れていた。

ようやく中継都市に辿り着いた僕達だったが、懸念点が一つ。

「あ…やっぱり、駄目みたい…」

「そうですか…。…まぁ、無理もないですね」

駅構内の掲示板に貼り付けられた、皇都に向かう列車の時刻表を確認したところ。

今日の皇都行きの最終列車は、既に一時間以上前に発車してしまっていた。

「次の列車は…明日の始発だね」

「ということは…今日は、ここに泊まるしかないですね」

またしても足止め。

折角中継都市までやって来て、山越えルートに追いつくことが出来たかと思ったのに…。

ここに来て、今度は朝まで動けないとは…。

なかなか前に進めないのがもどかしいですね。

でも、まさか徒歩で皇都に向かう訳にもいかず…。

「ないものはないのです。どうしようもありません。朝まで待つしかありません」

未練がましい僕と天音さんに反して、イレースさんはきっぱりとそう言った。

切り替え早いですね。さすが。

「朝まで…。何処で待とうか?まさか、ホテルに泊まる訳にはいかないよね…」

「論外です」

即座にイレースさんがそう答えた。

まぁ、そうなりますよね。

僕達は、アーリヤット皇国に不正入国した身。

目立つのを避けなければならない身なのだ。

旅行者である僕らがホテルにチェックインしたら、名前や住所の記入を求められる。

もしかしたら、身分証明書の提出を求められるかもしれない。

そうなったら困る。…非常に困る。 

出来るだけ、足はつかないようにしておきたい。

と、いうことになると…。

「ここで待てばよろしい」

イレースさんはすぐさまそう言って、駅構内のベンチに腰を下ろした。

…このまま、駅で朝を待つしかないですね。

さながらホームレスのようですが。

「そっか…。まぁ、そうするしかないよね…」

天音さんも覚悟を決めて、イレースさんの隣に座った。

下手に姿を晒す訳にはいきませんからね。

今夜はこのまま、駅のベンチに泊まるとしましょうか。

僕も、天音さんの隣に着席し。

更にその隣に、マシュリさんのキャリーケースを置いた。

多分今頃、山越えルート組も野宿してる頃でしょうから。

山賊に襲われる恐怖に怯えながら眠っている彼らに比べたら、駅のベンチで眠るなんて、さながら天国のようですよ。

それに、どうやら駅に泊まるのは僕らだけではないようで。

他にも、最終列車を逃した乗客達が、駅の床に新聞紙やタオルを敷いて、その上に座ったり寝転んだりしていた。

駅員達も、それを見ても何も言わなかったので。

アーリヤット皇国では、珍しい光景ではないのだろうと思われた。

それじゃ、また明日。おやすみなさい。
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