神殺しのクロノスタシス6
今朝の職員会議で、「今日は昼休みに講堂で準備することがあるから、お昼ご飯食べたら講堂に集まってね!」と言われ。

一体何の準備だろう。…実技試験か何かだろうか?と頭を捻り。

まぁ行ってみれば分かる、と、こうして昼休みに講堂にやって来た。

すると、うっきうきで巨大なチョコレートファウンテンの用意をする、シルナの姿があった。

俺も同じく、講堂に集められた天音が、シルナに尋ねようとした。

「…えーっと…学院長先生、これは…?」

「こっちがミルクチョコでー、こっちがホワイトチョコでー、こっちがイチゴチョコレート〜♪」

「…ナジュ君。通訳お願いしても良いかな」

シルナがあまりにも頭の中お花畑過ぎるので、ナジュに通訳を要求。

賢明な判断だよ。

「仕方ないですね、どれどれ…。…ふむ、見事ですね。今の彼の心の中、『チョコがいっぱいで嬉しいな〜♪』だけでいっぱいですよ」

「そ、そうなんだ…」

あの顔を見たら分かるよ。喜色満面とはあのこと。

「何々?何やってんのー?」

「楽しそうなことやってる?」

そこに、令月とすぐりが窓から入ってきた。

来るのは良いけど、普通に扉から入ってこいよ。

「何でお前らがここに…」

「え?だって、朝の職員会議を盗み聞きしてたら、昼休みに準備があるって言ってたから」

「なんか面白そーなことするのかなーと思って、『八千代』と一緒に覗きに来たんだー」

成程ね。

とりあえず俺は、明日から毎朝職員会議をする時に、窓に「令月とすぐり、盗み聞き禁止!」の立て看板を立てておこう。

「…どうやら下らないことに巻き込まれたようですね。私は職員室に帰ります」

イレースは、さっさと踵を返して職員室に戻ろうとした。

…が。

「イレースちゃん!ちょっと待って!手伝って!」

そうはさせまいとばかりに、シルナがイレースを引き留めた。

「ちっ。何ですか鬱陶しい」

「これから皆で、全校チョコフォンデュパーティーなんだよ!準備するの手伝って」

シルナの目は、それはもうダイヤモンドの輝き。

キラッキラ輝いていらっしゃった。

おっさんが目を輝かせても、少しも胸がときめかない。むしろ不快。

「…」

見てみろ。このイレースの、軽蔑しきった眼差し。

しかし、テンションマックス状態のシルナは、そんな冷ややかな眼差しにも全く狼狽えない。

「シルナ…。どういうことなんだよ、チョコフォンデュパーティーって…」

俺が尋ねると、シルナは「よくぞ聞いてくれました!」みたいな顔で、しゅばっ、とこちらを振り向いた。

うわぁ。聞くんじゃなかった…。

「ほら、最近ずーっと、気分が暗くなる話題ばっかりだったでしょ?」

…まぁ、そうだけど。

アーリヤット皇国との騒動とか、マシュリの心臓を取り戻しに冥界行ったりとか…。

「だから、ここいらで明るい話題を皆に提供して、明るい気分になってもらおう!って思ってね」

「はぁ…」

「チョコフォンデュパーティーをしよう!って思いついたんだ〜」

…そんな、ナイスアイデア!みたいな顔で言われても。

「明るい話題を皆に提供したい」。まぁここまでは分かる。

で、そこで何で「よし!チョコフォンデュパーティーをしよう!」という発想になるんだ?

「皆でチョコフォンデュを食べたら、幸せな気持ちになれるよね〜♪」

シルナは、うっきうきでチョコファウンテンの用意をしていた。

幸せな気持ち(シルナ基準)。

「…この愚か者が…」

イレースが毒づいていたが、今のシルナの耳には全く届いていなかった。

…幸せな奴だよ。全く。
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