神殺しのクロノスタシス6
「我々は正義の執行者であらねばならない。裏切り者をのさばらせていてはならない。神の代理人たる我々が、正義を行うのだ」
その通りだ。
仲間の言うことは何も間違っていない。私も同じ意見だ。
…でも、その直接的なやり方には賛同出来なかった。
「私達が直接手を下すことは出来ません。それは不可能です」
「何故?」
「私達は、まだ力が戻っていません」
主の力が、器の中に深く封じられているせいだ。
このままでは、いくら時が経とうとも、私達の力は回復しない。
主が力を取り戻さなければ、私達もまた、力を取り戻せないのだ。
しかし、大切な主の器が、敵の手に落ちている今。
私達が以前のような力を取り戻すことは、今のところ絶望的だった。
そのような不完全な状態で、どうして裏切り者に直接裁きを下せようか。
「不完全な力で、裏切り者と戦って勝てるでしょうか」
「なんと弱腰な…!あなたは誰よりも崇高な、神の使者であるべきだ。何故反対する?」
「例え不完全であろうとも、主の加護を受けた我々の力が、薄汚い裏切り者に劣るとでも?」
そうだ、と私は言いたかった。
今の私達では、裏切り者に粛清を与えるどころか。
返り討ちに遭って、余計に裏切り者にとって有利な状況になってしまう。
それだけは、避けなければならなかった。
「危険を犯すべきではないと言っているのです。正義を執行出来るのは、私達しかいません。その私達が、万が一にも、裏切り者の前に敗れるようなことがあっては…」
「つまりあなたは、我々が裏切り者に敗北すると思っているのか」
「…」
…それは。
…いや、認めなければならないだろう。
正しく敵の力量を測らなければ、足元をすくわれてしまう。
「今の私達では、確実に勝てるとは言い切れません」
「…!」
「力を取り戻さなければ、直接裏切り者を粛清することなど出来ません」
故に、私の意見は変わらない。
「ならば…どうしろと?まさか、これまで通りケチなやり方で、蒔いた種が芽吹くのを祈りながら眺めているしかないと言うのか?」
「そうです」
それが一番確実な方法なのだ。
直接戦って勝つことが出来ないなら、例えどれほどの時間がかかっても、間接的な手段を用いるしかない。
…しかし、仲間達は。
「馬鹿なことを。我々が目覚めてから、あなたの提案通り我々は幾度も、その方法で種を蒔いてきた。いくつも」
「…」
「しかし、その種が芽吹いたことが一度でもあると?全て、花が咲いて結実する前に、裏切り者の手先によって摘み取られている」
…それは。
「今回もそうだ。一国の国王を神の代理人に仕立てあげ、裏切り者に接触させた…。それでどうなった?」
「…」
その結果は、火を見るより明らかである。
結局、上手く行かなかった…いつも通り。
私達の思惑は、ずっと外れてばかりいるのだ。
「つまり、そのやり方では駄目なのだ。最早人間などに頼ってはいられない。我々が正義の鉄槌を…」
「いけません」
それでも私は、強硬な仲間の提案を退けた。
その通りだ。
仲間の言うことは何も間違っていない。私も同じ意見だ。
…でも、その直接的なやり方には賛同出来なかった。
「私達が直接手を下すことは出来ません。それは不可能です」
「何故?」
「私達は、まだ力が戻っていません」
主の力が、器の中に深く封じられているせいだ。
このままでは、いくら時が経とうとも、私達の力は回復しない。
主が力を取り戻さなければ、私達もまた、力を取り戻せないのだ。
しかし、大切な主の器が、敵の手に落ちている今。
私達が以前のような力を取り戻すことは、今のところ絶望的だった。
そのような不完全な状態で、どうして裏切り者に直接裁きを下せようか。
「不完全な力で、裏切り者と戦って勝てるでしょうか」
「なんと弱腰な…!あなたは誰よりも崇高な、神の使者であるべきだ。何故反対する?」
「例え不完全であろうとも、主の加護を受けた我々の力が、薄汚い裏切り者に劣るとでも?」
そうだ、と私は言いたかった。
今の私達では、裏切り者に粛清を与えるどころか。
返り討ちに遭って、余計に裏切り者にとって有利な状況になってしまう。
それだけは、避けなければならなかった。
「危険を犯すべきではないと言っているのです。正義を執行出来るのは、私達しかいません。その私達が、万が一にも、裏切り者の前に敗れるようなことがあっては…」
「つまりあなたは、我々が裏切り者に敗北すると思っているのか」
「…」
…それは。
…いや、認めなければならないだろう。
正しく敵の力量を測らなければ、足元をすくわれてしまう。
「今の私達では、確実に勝てるとは言い切れません」
「…!」
「力を取り戻さなければ、直接裏切り者を粛清することなど出来ません」
故に、私の意見は変わらない。
「ならば…どうしろと?まさか、これまで通りケチなやり方で、蒔いた種が芽吹くのを祈りながら眺めているしかないと言うのか?」
「そうです」
それが一番確実な方法なのだ。
直接戦って勝つことが出来ないなら、例えどれほどの時間がかかっても、間接的な手段を用いるしかない。
…しかし、仲間達は。
「馬鹿なことを。我々が目覚めてから、あなたの提案通り我々は幾度も、その方法で種を蒔いてきた。いくつも」
「…」
「しかし、その種が芽吹いたことが一度でもあると?全て、花が咲いて結実する前に、裏切り者の手先によって摘み取られている」
…それは。
「今回もそうだ。一国の国王を神の代理人に仕立てあげ、裏切り者に接触させた…。それでどうなった?」
「…」
その結果は、火を見るより明らかである。
結局、上手く行かなかった…いつも通り。
私達の思惑は、ずっと外れてばかりいるのだ。
「つまり、そのやり方では駄目なのだ。最早人間などに頼ってはいられない。我々が正義の鉄槌を…」
「いけません」
それでも私は、強硬な仲間の提案を退けた。