神殺しのクロノスタシス6
お分かり頂けただろうか。

このお馬鹿なベリクリーデは、田作りというおせち料理を、「田んぼ作り」だと誤解している。

あー、うん。はいはい。成程ねー。

まぁ紛らわしい名前だもんな。「田」作りなんだから、田んぼ作るのかなーって思うのも無理はない。

誰だって誤解するのも当然、って。

…そんな訳があるか。

「…お前はアホの子なのか?田作りってそういう意味じゃねぇよ!」

「ほぇ?」

再度鍬を振り上げて、きょとんとこちらを向くベリクリーデ。

危ないから。その鍬、離しなさい。

「あのな、ベリクリーデ。そうじゃないんだ。田作りっていうのは小魚の甘辛炒めであって…」

「これが終わったらね、かずのこ、っていうのを取りに行くんだよ。きっとカズさんって人の子供なんだ。その人を取ってこよう」

「誘拐!それは誘拐だ!」

止めなくては。全力を以て止めなくては。

つーか、誰だよカズさんの子って。

数の子か?数の子のことだよな?

あれは人じゃなくて、魚の卵だ。

「それからねー、こんぶ?っていう人の首を絞めて、ゆーとーえびを捕まえて、ゴボウで叩いてー」

あーもうめちゃくちゃだよ。

「ママを狩って、ママ狩りの酢漬けにするの」

猟奇的。

違うんだベリクリーデ。昆布巻きはコンブさんの首を締めることじゃない。

有頭海老っていうのは、その名の通り尾頭付きの海老であって。

叩きゴボウは、ゴボウで人を叩くことではない。

何より、ままかりは御婦人を狩猟することじゃないんだ。

頼む。分かってくれベリクリーデ。

「よーし。それじゃコンブさんを探しに行こっかー」

「待て。早まるな」

全国のコンブさん(?)の為に。

俺は、ベリクリーデの腕をがっちりと捕まえたのだった。

もう逃さんぞ。
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