神殺しのクロノスタシス6
数時間後。

「ほら、出来たぞベリクリーデ」

「わーい。やったー」

俺が手ずから、おせちを作った。

3段の重箱に詰めた、本格的なおせちである。

1の重には、最初ベリクリーデが企画していた料理。

黒豆や田作りや昆布巻きや数の子、栗きんとん、伊達巻き、紅白のかまぼこなどの、伝統的なおせち料理を入れた。

2の重には、ローストビーフやミニハンバーグ、エビフライやミニオムライス、スモークサーモン、野菜のマリネなどの洋食を。

3の重には、麻婆豆腐、シュウマイ、ミニ春巻き、青椒肉絲、卵ときくらげの炒め物、八宝菜などの中華料理を入れた。

本来、洋食や中華料理は、お重には入れないものだと分かっている。

でも、お口がお子様なベリクリーデには、伝統的なおせち料理はあまり口に合わないかと思って。

おせち料理って、美味しいけど、純和食って感じがして…子供は食べにくい味だよな。

だから、お子様ベリクリーデでも食べやすいようにと、敢えて2の重と3の重には、おせちじゃない料理を入れてみた。

言っとくが、これ、めちゃくちゃ手間かかったからな。

作りながら、途中、5回くらい心折れそうになった。

そして、30回くらいは「俺は何でこんなことをしてるんだろう?」と考えた。

それでも作り上げたからな。俺、偉い。

これでもし、ベリクリーデが「要らない」とか言ったら、俺はその場に崩れ落ちるところだったが。

「わー。わーわー。わー」

ベリクリーデが、そんな可愛げのないことを言うはずもなく。

俺のお手製おせちを前に、目をキラキラさせていた。

遠足のお弁当を見つめる子供のよう。

「おせちだー。凄い凄い。ジュリスすごーい」

「お、おぉ…」

「美味しそうだー。凄いねジュリス。この手で作ったの?」

と言って、ベリクリーデは俺の両手を掴んだ。

な、何やってんの?

「そ、そうだけど…」

「そっかー。ジュリスの手、凄いねー」

さすさす、と俺の手を撫でていらっしゃる。

…褒め方が独特だな。

「魔法の手だー」

「大袈裟だな…。時間と手間さえかければ、その辺の主婦でも作れるぞ?」

「ジュリスの手は神の手だね」

「…だから、大袈裟だって」

神の手を持ってるのは、むしろお前だろ?

まぁ、それは別の意味だけど…。

「ほら、出来たんだから食べろよ」

「ほぇ?」

「食べたかったんだろ?おせち」

それで、田作りとか言って田んぼを掘ってたんだろ?

この時期になれば、田作りなんてスーパーのお惣菜コーナーに売ってるだろうに。

「全部食べて良いぞ」

「…?ジュリスは?ジュリスは食べないの?」

「俺は別に良いよ」

作ってる途中で、ちょいちょい味見させてもらったし。

何より、ベリクリーデの為に作ったんだから、ベリクリーデに食べてもらわないと困る。
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