神殺しのクロノスタシス6
第3章
…学院の中に、遺体安置室などあるはずもなく。

何処に連れて行くか迷った結果、絶対に生徒が迷い込んでくることがないよう。

学院長室に一番近い、空き教室に連れて行った。

入り口の鍵をしっかり閉めて、カーテンも閉めておいた。

…これで大丈夫だろう。…しばらくは。

何とか夜が明ける前に、他の生徒が見つける前に、最低限の証拠隠滅は済ませた。

更に、原型を留めていない亡骸を、シルナが回復魔法を駆使して、何とか「元の形」に取り繕ってくれた。

傷口が塞がっただけで、失われた魂が戻ってくる訳ではない。

だが、傷が塞がった状態で改めて、マシュリを眺めていると。

ただ眠っているだけのように見えて、それがまた何とも言えず…虚しかった。

…現実を見なくては。

起こしても何しても、目を覚ましはしないんだ。…もう、二度と。

またしばらく、誰も口を開かなかったが。

「…呆けていても仕方ないでしょう。こうしている間にも、犯人が次のターゲットを探しているかもしれません」

溜め息混じりに、イレースがそう呟いた。

犯人…。…犯人な。

「…誰なんだ?マシュリをあんな目に遭わせたのは…」

そいつが今目の前にいたら、さすがに冷静ではいられないぞ。

「あなた達、校舎内を巡回してたんでしょう。何か見なかったんですか」

「って言われてもなー…。俺達が駆け付けた時には、既にあの状態だったし」

「人の気配は感じなかったよ。少なくとも僕達は」

イレースの問いに、すぐりと令月が答えた。

そうか…。

「でも、見つけた時の死体の感じからして…。殺されてから、そんなに時間は経ってない」

「しぼーすいてい時刻は、多分俺達が見つける20分〜30分前くらいかなー」

「…確かなのか?」

「間違えるはずないじゃん。俺達を誰だと思ってんのさ」

…だよな。

30分前…か。

もう少し、二人が見つけるのが早ければ…と思う一方。

間に合わなくて良かったのかもしれないと、残酷なことを考えてしまった。

マシュリ一人で済んだ、という意味で。

もし令月達がその時、現場に居合わせていたら。

今ここに並んでいる死体は、一つでなく三つだったかもしれないのだ。

そう思うとぞっとする。

マシュリ一人だけでも…耐え難い痛みなのに…。

「死因は、どう見てもあの7本の剣だね。…7回も突き刺すなんて、全く良い趣味してるよ」

「すぐり…。不謹慎が過ぎるぞ」

「逆に、そうでもしなきゃこの人を殺すことは出来ないって知ってたんでしょ。これは手がかりだと思うけどねー」

あ、そうか…。

毒でもない、拳銃でもない。

鋭利な刃物で全身を滅多刺しという、非常に徹底した殺され方。

まるで、マシュリの驚異的な再生能力のことを知っていたかのようじゃないか。

ってことは…つまり…。

「マシュリのことを知ってる誰かが犯人…ってことか?」

「うん。そういうことだね」

「でも、一体誰が…」

「ってことは、ここにいる僕達全員に、犯人の疑いがかけられてるってことになるね」

「…!」

令月の一言に、俺は目を見開いた。
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