神殺しのクロノスタシス6
途端に、部屋の中の空気が凍った。
…嘘だろ?
ただでさえ、信じられないような深いショックを受けているのに。
更に、仲間同士で疑い合わなきゃいけないのか。
冗談じゃないぞ。
「な…仲間を疑うのはやめようよ。仲間内で揉めてる場合じゃないでしょ?」
と、シルナが言うも。
「何で?味方内に犯人がいるなら、それこそ悠長なことやってる場合じゃないよ」
「不穏分子はすぐに叩かないと、今に次の犠牲者が出るよ。早めにはっきりさせた方が良いよねー」
令月とすぐりの意見は、非常に厳しく、そして現実的だった。
さすがは元暗殺者といったところだろうか。肝が据わってる。
だけど…俺は、二人のようには考えられなかった。
仲間を疑いたくないのは、誰だって当然だろう?
「かく言うあなた方も、アリバイは何もない訳ですが。自らの無実をどう証明するつもりです?」
と、イレース。
そ、そんな第一発見者が一番怪しい、みたいな。
確かに第一発見者は疑われやすいが、実際第一発見者は無罪であることの方が多いのでは?
「まー、そーだね。俺は自分と『八千代』が無実だって知ってるけど」
「僕も『八千歳』が無実なことを知ってるけど、証明出来ないもんね」
如何せん、皆自分の部屋で一人で寝ているところを、令月とすぐりに起こされたのだ。
この中で、犯行推定時刻にアリバイのある人間はいない。
「そんな…。仲間同士で争ってちゃいけないよ。仲間を疑うような真似、僕はしたくない」
天音は断固として、今この場で犯人探しをすることを拒んだ。
その気持ちはよく分かる。俺だって同じ意見だ。
だが…。
「したいとかしたくないとかは関係ないでしょ。事実として、既にマシュリは殺されてるんだから」
「…!」
「失った命は戻らない。なら僕達に出来ることは、彼の犠牲を無駄にしないこと…。決して二人目の犠牲者を出さないことだ」
天音の感情論を、令月が真正面から一刀両断した。
…こういう時の令月とすぐりの言葉は、重みが違うな。
「…でも…仲間同士で疑うなんて…」
それでも、心根の優しい天音は、なおも味方を疑うことを躊躇していた。
「…そうだ、ナジュ君なら」
「…」
「ナジュ君なら分かるんじゃないの?僕達の…心の中を覗けば」
天音が、ナジュの方を振り向いた。
あ、そうか…。
ナジュの読心魔法を前に、何人たりとも嘘はつけない。隠し事も出来ない。
だが、ナジュは天音に話を振られても、心ここにあらずといって様子でボーッとしていた。
…大丈夫か?
「ナジュ君?…どうしたの?」
「…え。はい?」
ようやく天音に声をかけられていることに気づいたらしく、ナジュが我に返った。
「だから…ナジュ君なら、この中に犯人がいるかどうか分かるんじゃないか、って…」
「あぁ、はい…。それはまぁ…」
…何だ。その煮え切らない返事は。
気丈に振る舞ってるように見えて、ナジュは意外と…仲間思いなところがあるからな。
特に、マシュリは…。ナジュにとって…と言うより、ナジュの中にいるリリスにとって…親交の深い相手だった。
俺達以上に、ショックが大きいのかもしれない。
…嘘だろ?
ただでさえ、信じられないような深いショックを受けているのに。
更に、仲間同士で疑い合わなきゃいけないのか。
冗談じゃないぞ。
「な…仲間を疑うのはやめようよ。仲間内で揉めてる場合じゃないでしょ?」
と、シルナが言うも。
「何で?味方内に犯人がいるなら、それこそ悠長なことやってる場合じゃないよ」
「不穏分子はすぐに叩かないと、今に次の犠牲者が出るよ。早めにはっきりさせた方が良いよねー」
令月とすぐりの意見は、非常に厳しく、そして現実的だった。
さすがは元暗殺者といったところだろうか。肝が据わってる。
だけど…俺は、二人のようには考えられなかった。
仲間を疑いたくないのは、誰だって当然だろう?
「かく言うあなた方も、アリバイは何もない訳ですが。自らの無実をどう証明するつもりです?」
と、イレース。
そ、そんな第一発見者が一番怪しい、みたいな。
確かに第一発見者は疑われやすいが、実際第一発見者は無罪であることの方が多いのでは?
「まー、そーだね。俺は自分と『八千代』が無実だって知ってるけど」
「僕も『八千歳』が無実なことを知ってるけど、証明出来ないもんね」
如何せん、皆自分の部屋で一人で寝ているところを、令月とすぐりに起こされたのだ。
この中で、犯行推定時刻にアリバイのある人間はいない。
「そんな…。仲間同士で争ってちゃいけないよ。仲間を疑うような真似、僕はしたくない」
天音は断固として、今この場で犯人探しをすることを拒んだ。
その気持ちはよく分かる。俺だって同じ意見だ。
だが…。
「したいとかしたくないとかは関係ないでしょ。事実として、既にマシュリは殺されてるんだから」
「…!」
「失った命は戻らない。なら僕達に出来ることは、彼の犠牲を無駄にしないこと…。決して二人目の犠牲者を出さないことだ」
天音の感情論を、令月が真正面から一刀両断した。
…こういう時の令月とすぐりの言葉は、重みが違うな。
「…でも…仲間同士で疑うなんて…」
それでも、心根の優しい天音は、なおも味方を疑うことを躊躇していた。
「…そうだ、ナジュ君なら」
「…」
「ナジュ君なら分かるんじゃないの?僕達の…心の中を覗けば」
天音が、ナジュの方を振り向いた。
あ、そうか…。
ナジュの読心魔法を前に、何人たりとも嘘はつけない。隠し事も出来ない。
だが、ナジュは天音に話を振られても、心ここにあらずといって様子でボーッとしていた。
…大丈夫か?
「ナジュ君?…どうしたの?」
「…え。はい?」
ようやく天音に声をかけられていることに気づいたらしく、ナジュが我に返った。
「だから…ナジュ君なら、この中に犯人がいるかどうか分かるんじゃないか、って…」
「あぁ、はい…。それはまぁ…」
…何だ。その煮え切らない返事は。
気丈に振る舞ってるように見えて、ナジュは意外と…仲間思いなところがあるからな。
特に、マシュリは…。ナジュにとって…と言うより、ナジュの中にいるリリスにとって…親交の深い相手だった。
俺達以上に、ショックが大きいのかもしれない。