神殺しのクロノスタシス6
「ナジュ君から見て、この中に隠し事をしている人はいる?」
非常にあけすけな質問である。
だが、この際はっきりさせるのは悪くない。
無意味に疑い合いたくはないからな。
「心の中を覗くことは出来ますよ。僕の手にかかれば、誰一人隠し事は不可能です。…でも…」
「…でも?」
「…それ、万が一僕が犯人だったとしたら、僕の証言に何の意味もないですよね」
「…あっ…」
…そうだった。
ここにいる全員に容疑がかかっている状況なのだ。ナジュとて例外ではない。
ナジュは俺達の心を読めば、俺達が嘘をついているかどうか、すぐに見抜くことが出来るが。
俺達は、例えナジュが嘘をついていたとしても、それを見抜く方法がないのだ。
となると、ナジュの言葉の信憑性が問題になって…。
…結局、誰のアリバイ証明にもならないのだ。
ややこしいことになってんな。
「それに、僕はその人が考えていることしか分かりませんから。もし、誰かが何者かに操られていたり、洗脳されているとしたら…」
「あぁ…確かに…」
「自分でも分からないうちに犯行に及んでるんじゃ、それこそ手のうちようがないですね」
そうか。その可能性もあるんだよな。
むしろ、その可能性の方が高いんじゃないか。
誰が自分の意志で、明確な殺意と敵意を持って、マシュリを手に掛けるだろうか。
もし仲間のうちの誰の犯行なのだとしても、それは誰かに操られていたり、洗脳されたり。
あるいは、何者かに脅されて…犯行を強要されたに違いない。
「この状況じゃ、僕の言葉の信憑性を保証することは出来ませんが…。少なくとも僕が見た限り、この中に裏切り者はいません」
ナジュは、はっきりとそう言った。
…つまり、犯人はここにいない別の人間だ、と。
「…信じて良いんだよな?ナジュ」
「はい、とは言えませんね。僕も元々は敵側の人間だった訳ですし。怪しいのは誰でも同じでしょう」
そうか。でも俺はお前を信用するぞ。
この中の誰も疑ったりしない。…仲間だからな。
そんな俺の心の中を読んだナジュが、ぽつりと一言。
「…存外、甘い人ですね。羽久さんって」
うるせぇ。
互いに疑い合って、疑心暗鬼に陥るよりマシだ。
もういっそ、疑い合うのやめないか?
こうして俺達が味方うちで揉めることこそ、犯人の手のひらの上のような気がする。
「どーする?お互い二人一組になって、監視でもし合う?」
「それ、その二人がグルだったら意味ないよね」
「じゃ、5人組みたいに全員で見張りし合う?俺達7人だから…7人組?」
多いな。
常に7人揃って見張り合うって、相当大変だぞ。
でも、お互いの身の潔白を証明する為、そしてお互いを守り合う為には、そうするしかないのかもしれない。
これ以上の犠牲を出さない為なら、何だってやるつもりだった。
…しかし、シルナは首を横に振った。
「…監視し合う必要なんてないよ。この中に犯人なんていないから」
「…シルナ…」
「この中に、犯人はいない」
シルナは同じことを、二度繰り返して言った。
非常にあけすけな質問である。
だが、この際はっきりさせるのは悪くない。
無意味に疑い合いたくはないからな。
「心の中を覗くことは出来ますよ。僕の手にかかれば、誰一人隠し事は不可能です。…でも…」
「…でも?」
「…それ、万が一僕が犯人だったとしたら、僕の証言に何の意味もないですよね」
「…あっ…」
…そうだった。
ここにいる全員に容疑がかかっている状況なのだ。ナジュとて例外ではない。
ナジュは俺達の心を読めば、俺達が嘘をついているかどうか、すぐに見抜くことが出来るが。
俺達は、例えナジュが嘘をついていたとしても、それを見抜く方法がないのだ。
となると、ナジュの言葉の信憑性が問題になって…。
…結局、誰のアリバイ証明にもならないのだ。
ややこしいことになってんな。
「それに、僕はその人が考えていることしか分かりませんから。もし、誰かが何者かに操られていたり、洗脳されているとしたら…」
「あぁ…確かに…」
「自分でも分からないうちに犯行に及んでるんじゃ、それこそ手のうちようがないですね」
そうか。その可能性もあるんだよな。
むしろ、その可能性の方が高いんじゃないか。
誰が自分の意志で、明確な殺意と敵意を持って、マシュリを手に掛けるだろうか。
もし仲間のうちの誰の犯行なのだとしても、それは誰かに操られていたり、洗脳されたり。
あるいは、何者かに脅されて…犯行を強要されたに違いない。
「この状況じゃ、僕の言葉の信憑性を保証することは出来ませんが…。少なくとも僕が見た限り、この中に裏切り者はいません」
ナジュは、はっきりとそう言った。
…つまり、犯人はここにいない別の人間だ、と。
「…信じて良いんだよな?ナジュ」
「はい、とは言えませんね。僕も元々は敵側の人間だった訳ですし。怪しいのは誰でも同じでしょう」
そうか。でも俺はお前を信用するぞ。
この中の誰も疑ったりしない。…仲間だからな。
そんな俺の心の中を読んだナジュが、ぽつりと一言。
「…存外、甘い人ですね。羽久さんって」
うるせぇ。
互いに疑い合って、疑心暗鬼に陥るよりマシだ。
もういっそ、疑い合うのやめないか?
こうして俺達が味方うちで揉めることこそ、犯人の手のひらの上のような気がする。
「どーする?お互い二人一組になって、監視でもし合う?」
「それ、その二人がグルだったら意味ないよね」
「じゃ、5人組みたいに全員で見張りし合う?俺達7人だから…7人組?」
多いな。
常に7人揃って見張り合うって、相当大変だぞ。
でも、お互いの身の潔白を証明する為、そしてお互いを守り合う為には、そうするしかないのかもしれない。
これ以上の犠牲を出さない為なら、何だってやるつもりだった。
…しかし、シルナは首を横に振った。
「…監視し合う必要なんてないよ。この中に犯人なんていないから」
「…シルナ…」
「この中に、犯人はいない」
シルナは同じことを、二度繰り返して言った。