神殺しのクロノスタシス6
憶測が憶測を呼び、どんどん話が不穏な方向に向かっている気がする。

どうするのが正解なのか、それは誰にも分からない。

ただ一つ分かるのは…令月達が言ったように、決して二人目の犠牲者を出してはいけないということ。

その為に出来ることは、何でもやらなければならない。

それだけははっきりしている。

話し合いが暗礁に乗り上げかけたところで、シルナが別の提案をした。

「聖魔騎士団の皆に連絡して、学院に来てもらおう」

…聖魔騎士団に…。

…まぁ、そうしてもらった方が良いよな。

正直、もう俺達の手に負えない。

未だに、全部夢だったら良いのに、って思ってるくらいなのに。

「その方が良いでしょうね。再び襲撃者が現れないとも限りませんし。人手は多い方が良いでしょう」

イレースも賛成。

俺も賛成だよ。

襲撃者が神竜族だとしても、ナツキ様の手の者だろうと、他の誰かだろうと。

マシュリを圧倒するほどの実力を持っているのなら、こちらも普段以上の戦力を整えなければならない。

…これ以上、俺達から何も奪わせない為に。

もっと早く、そうしていれば…。

マシュリは、死なずに済んだかもしれないのに。

「…マシュリ…」

俺は、両目を固く閉じたマシュリの顔を見下ろしながら、彼の名前を呟いた。

「…ごめんな」

仲間なのに。俺達は…お前を助けることが出来なかった。

辛かったろう。一人ぼっちで息絶える瞬間、とても痛くて、怖くて…孤独だっただろう。

その時のマシュリの苦痛を想像しただけで、気が狂いそうになる。

同時に、そんなマシュリを助けることが出来なかった自分に腹が立つ。

「…羽久、大丈夫?」

俺の心の内を見透かしたように、シルナが声をかけてきた。

…それはこっちの台詞だ。

俺でさえ、責任を感じて、酷く自分を責めているのに…。

恐らくこの中で、一番責任を感じて、自分を責めているであろうシルナを。

…支えてあげられるのは、俺だけだ。

だから、俺が弱音を吐き、シルナに甘える訳にはいかない。

「…大丈夫だ。『二人目』だけは、絶対に出させない」

「…うん、そうだね」

そして、ただ一人犠牲になってくれたマシュリの仇を討つ。

それが、せめてものマシュリへの手向けだった。
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