神殺しのクロノスタシス6
シュニィは、ひとしきり泣いた後。

「…済みません。取り乱してしまって…」

アトラスに支えられるようにして、潤む瞳を拭って立ち上がった。

本当は、まだ悲しみが癒えた訳じゃないことは、誰もが分かっていた。

「シュニィ…。無理をするな。ここは俺達に任せて、お前は…」

シュニィを気遣って、アトラスが声をかけたが。

シュニィは、そんな小さく首を横に振った。

「大丈夫です。辛いのは皆さんも同じ…。…いいえ、学院長先生や羽久さん達は、私以上に辛い思いをしていらっしゃるのに…」

「…」

「私だけ…逃げる訳にはいきません。目を逸らす訳にはいかないのです。マシュリさんの為にも…」

目を逸らす訳にはいかない…か。

その通り。…シュニィの言う通りだ。

…嫌でも、無理でも、割り切って考えなくては。

「犯人を突き止めなければなりません。逃げられてしまう前に…」

「…その為に、僕が来ました。…遺体を検めさせてもらっても良いですか?」

エリュティアが、自らそう申し出た。

…あぁ、分かってたよ。

エリュティアが来てくれたのは、その為なんだろうってこと。

エリュティアの探索魔法なら、現場や遺体に残された『痕跡』を辿って、犯人に繋がる手がかりを得られるかもしれない、と。

「俺は、エリュティアの手伝いだ。…現場を見せてもらっても良いか?」

更に、無闇も手伝いを申し出てくれた。

さすが、『死火』の守り人。

こんな時でも、しっかりしている。

動揺しっぱなしの俺には、羨ましいくらいだ。

「勿論だよ。…イレースちゃん、無闇君を…現場に案内してあげてくれる?」

「分かりました。こちらに」

シルナに頼まれて、イレースはすぐさま頷き。

無闇を伴って、現場である園芸部の畑に向かった。

で、こちらは。

「…ごめんなさい。調べさせてくださいね」

エリュティアは、マシュリにそう言って詫びてから。

そっと、マシュリの身体に触れた。

…何か見つかると良いのだが…。

…その時。

「…」

「…?」

俺の隣に立っていたナジュが、ボーッと虚空を見つめて突っ立っていることに気づいた。
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