神殺しのクロノスタシス6
…大丈夫か?
なんか、無を眺めてるみたいだけど…。
「ナジュ君、大丈夫?」
天音も気づいたのだろう、ぼんやりと立ち尽くすナジュに声をかけた。
しかし、ナジュは答えず無反応のまま。
…本当に大丈夫か?
「ナジュ君。ナジュ君、しっかりして」
「…え。あ、はい。何ですか」
天音に肩を揺さぶられて、ようやく我に返ったらしい。
「大丈夫?…何だか顔色が悪いよ」
「あ、いえ…。別に…」
「無理しないで。…辛いなら、部屋で休んでても良いよ」
無理もない。
突然こんなことになって、誰だって動揺して、具合が悪くもなる。
「いえ…。それは、大丈夫なんですけど…」
「…けど…?」
「…済みません。やっぱり、大丈夫じゃないかもしれません」
えっ…。
「ちょっと…済みません、学院長。失礼しても良いですか?」
「それは構わないけど…。大丈夫?ナジュ君。医務室で休んだ方が…」
「いえ、それは大丈夫です。…自分の部屋で、ちょっと休んできます」
…おい。本当に大丈夫なのか?
顔色が悪い。
「不死身先生。今は一人にならない方が良いんじゃないかな」
「平気ですよ。僕はその名の通り、不死身ですから。忘れました?」
令月の忠告に、ナジュは口元だけ笑ってそう答えた。
そりゃ、ナジュが不死身なのは知ってるけど。
不死身なのは肉体だけであって、その魂は、精神は決して不死なんかじゃないってことを。
これまでの経験から、嫌と言うほど思い知らされてるんだが?
…しかし。
「こんな時に済みません。…少し休んだら、また戻ってきます」
これ以上、余計な詮索も追及もされたくないとばかりに。
ナジュは一方的に、そう言い残すなり踵を返し、空き教室を出ていった。
「…なんか、ナジュせんせー様子が変だね」
「あぁ…。変だったな」
そりゃこんな状況なのだから、誰だって様子がおかしくもなるが…。
「ナジュ君は…自分の命には無頓着なのに、他人の痛みには敏感な人だから」
この中で、誰よりもよくナジュのことを知っている天音が、ポツリと呟いた。
「それに、辛い時に素直に辛いって言えないから…。平気な振りをしてるけど、きっと凄く傷ついてるんだと思う」
「…あいつ、素直じゃないもんな…」
さすが天音。よく分かっていらっしゃる。
あいつのことだから…自分のせいじゃないのに、自分のせいだと自分を責めてそうだ。
シルナと同じだな。何でも自分のせいにしなきゃ気が済まない。
誰の責任でもないのに。
強いて責任を問うなら、ここにいる、俺達全員にある。
誰か一人が背負う必要はないのだ。
そして、マシュリも…きっと、自分が殺されたのは俺達のせいだ、とは言わないはずだ。
あいつもまた…自分より、他人を大切にする…優しい奴だったから。
「天音君。後でナジュ君の様子を見に行ってあげてくれる?」
「はい。分かりました」
シルナが、天音に頼んだ。
いくらナジュが不死身だろうと、令月の言う通り、今は誰も、出来るだけ一人になるべきではない。
少なくとも、二人一組は心掛けるべきだろう。
…でも…。
「ナジュ…大丈夫だと良いけど…」
ズルいよな。あいつは俺達が何を考えているのか、すぐさま見通す癖に。
あいつが何を考えているかは、俺達には推し量ることしか出来ないんだから。
また、一人で背負い込んで思い悩んでいなきゃ良いが…。
なんか、無を眺めてるみたいだけど…。
「ナジュ君、大丈夫?」
天音も気づいたのだろう、ぼんやりと立ち尽くすナジュに声をかけた。
しかし、ナジュは答えず無反応のまま。
…本当に大丈夫か?
「ナジュ君。ナジュ君、しっかりして」
「…え。あ、はい。何ですか」
天音に肩を揺さぶられて、ようやく我に返ったらしい。
「大丈夫?…何だか顔色が悪いよ」
「あ、いえ…。別に…」
「無理しないで。…辛いなら、部屋で休んでても良いよ」
無理もない。
突然こんなことになって、誰だって動揺して、具合が悪くもなる。
「いえ…。それは、大丈夫なんですけど…」
「…けど…?」
「…済みません。やっぱり、大丈夫じゃないかもしれません」
えっ…。
「ちょっと…済みません、学院長。失礼しても良いですか?」
「それは構わないけど…。大丈夫?ナジュ君。医務室で休んだ方が…」
「いえ、それは大丈夫です。…自分の部屋で、ちょっと休んできます」
…おい。本当に大丈夫なのか?
顔色が悪い。
「不死身先生。今は一人にならない方が良いんじゃないかな」
「平気ですよ。僕はその名の通り、不死身ですから。忘れました?」
令月の忠告に、ナジュは口元だけ笑ってそう答えた。
そりゃ、ナジュが不死身なのは知ってるけど。
不死身なのは肉体だけであって、その魂は、精神は決して不死なんかじゃないってことを。
これまでの経験から、嫌と言うほど思い知らされてるんだが?
…しかし。
「こんな時に済みません。…少し休んだら、また戻ってきます」
これ以上、余計な詮索も追及もされたくないとばかりに。
ナジュは一方的に、そう言い残すなり踵を返し、空き教室を出ていった。
「…なんか、ナジュせんせー様子が変だね」
「あぁ…。変だったな」
そりゃこんな状況なのだから、誰だって様子がおかしくもなるが…。
「ナジュ君は…自分の命には無頓着なのに、他人の痛みには敏感な人だから」
この中で、誰よりもよくナジュのことを知っている天音が、ポツリと呟いた。
「それに、辛い時に素直に辛いって言えないから…。平気な振りをしてるけど、きっと凄く傷ついてるんだと思う」
「…あいつ、素直じゃないもんな…」
さすが天音。よく分かっていらっしゃる。
あいつのことだから…自分のせいじゃないのに、自分のせいだと自分を責めてそうだ。
シルナと同じだな。何でも自分のせいにしなきゃ気が済まない。
誰の責任でもないのに。
強いて責任を問うなら、ここにいる、俺達全員にある。
誰か一人が背負う必要はないのだ。
そして、マシュリも…きっと、自分が殺されたのは俺達のせいだ、とは言わないはずだ。
あいつもまた…自分より、他人を大切にする…優しい奴だったから。
「天音君。後でナジュ君の様子を見に行ってあげてくれる?」
「はい。分かりました」
シルナが、天音に頼んだ。
いくらナジュが不死身だろうと、令月の言う通り、今は誰も、出来るだけ一人になるべきではない。
少なくとも、二人一組は心掛けるべきだろう。
…でも…。
「ナジュ…大丈夫だと良いけど…」
ズルいよな。あいつは俺達が何を考えているのか、すぐさま見通す癖に。
あいつが何を考えているかは、俺達には推し量ることしか出来ないんだから。
また、一人で背負い込んで思い悩んでいなきゃ良いが…。