神殺しのクロノスタシス6
第4章

羽久side

――――――…天音が俺とシルナを呼びに来た時。

深夜にも関わらず、俺はシルナと共に、学院長室にいた。

いつもなら眠っている時間なのだが…。とてもじゃないが、眠れる気がしなかった。

昨日、夜中に令月達に起こされてからというもの、一睡もしていないし、何なら座って休むこともしていない。

それなのに、疲れるどころか、頭の中が冴え渡っていた。

そして、それは俺だけではない。

「…羽久。少し休んだ方が良いよ」

シルナが、俺にそう言った。

今は一人にならない方が良い、という令月の助言に従い。

俺は、シルナと行動を共にしていた。

同じように、天音はナジュと、令月はすぐりと。

イレースは女性なので、聖魔騎士団から応援に来てくれたシュニィと一緒にいるはずだ。

…で、それは良いとして。

シルナの奴、今俺に休めって言った?

「一日中動きっぱなしで、疲れたでしょ。休んだ方が良い」

「それはお前もだろ?」

自分だって同じくらい動きっぱなしの癖に。

それどころか、シルナは昨日の夜からずっと。

一口も、大好きなチョコレートを口にしていないのだ。

一大事だぞ、これは。

シルナからチョコレートを取り上げたら、半日足らずで禁断症状が出る、と言われているのに。

今のところ、禁断症状が出ている様子はない。

つまり、現在シルナの身体は、平常運転から程遠い状態にある訳だ。

「お前も休めよ。今日のチョコはどうした?」

糖分の摂取は大事なんじゃなかったのか。

しかし。

「あ、そうか…。そういえば、今日は全然食べてないね…」

チョコのことを忘れていたなんて。これは本当に一大事だ。

「お前…本当にシルナか…?」

チョコを忘れるなんて、それ本当にシルナか?お前、本当にシルナだよな?

神竜バハムートがシルナの振りしてる訳じゃないよな?

「羽久が…私に失礼なこと考えてる気がするなぁ…」

「シルナがシルナらしからぬことを言うからだろ」

チョコと言えばシルナ、シルナと言えばチョコ、ってくらい。

餓鬼のように、毎日チョコレートを貪り食ってるのに。

そんなシルナが、チョコを忘れるくらい思い悩んでいる。

…まぁ、そりゃそうだよな。

気持ちは分かるよ。…俺だって、とても平静ではいられないから。 

俺達の心の中を占めているのは、勿論…マシュリのことだった。
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