神殺しのクロノスタシス6
これには、キュレムもたじたじ。

「え、いや、うん。えっと、そ、そんな畏まられると反応に困るんだけど」

「キュレムさん…。あなたの器の小ささにはがっかりですよ。大恩ある学院長がここまで頼んでるのに、自分だけコタツでぬくぬくしてたいとは…。いやぁ見損ないましたねー」

「ルイーシュてめぇ!裏切るんじゃねぇ。誰よりもコタツでぬくぬくしたがってんのはお前だろ!」

…相棒同士で喧嘩すんな。

「無理にとは言わないよ。皆分かってると思うけど、本当に危険なことだから…。少なくとも、シュニィちゃんやアトラス君は来ちゃ駄目」

まぁ、そうなるよな。

しかし、シュニィは納得が行かなかったようで。

「…!学院長先生、どうしてですか。私だってマシュリさんを助けに…」

シルナに食って掛かるように、必死に訴えたが。

「シュニィちゃんには守るものがあるでしょ。君の身にもしものことがあったら、君の子供達はどうなるの?」

「…っ、それは…」

さすがにシュニィも、アイナとレグルス、二人の可愛い子供達のことを指摘されると。

強くは言えないらしく、悔しそうに唇を噛み締めて引き下がった。

そう、その方が良い。

例えもしものことがあっても、俺は一人の命で済むけれど。

シュニィはそうは行かない。家で待ってる家族がいる。

「でも…私だって、マシュリさんを…」

「分かってるよ。だから、君はここで待ってて欲しい。マシュリ君が帰ってくる居場所を作って、待っててあげて」

「…はい…」

渋々ながら、不本意ながら、シュニィは小さく頷いた。

シルナが、シュニィを遠征チームから外すことは分かっていた。

と言うか、もしシルナが外さなかったら、俺が無理矢理にでも止めた。

幼い二人の子供達から、母親を奪う気は毛頭ないからな。

「…ってことは、俺達独り身連中が選ばれる訳か…。俺も家庭を持っておけばなぁ…」

「現在進行系で彼女いないどころか、過去にも彼女がいたことなんて一度もなく、そしてこれからもその予定は全くありませんけどね」

「現在と過去に関しては否定のしようもないが、未来には希望を持っても良いだろ!」

はいはい。キュレムとルイーシュは相変わらず仲良しなことで。

お前らがいてくれると、程良く緊張感がほぐれて良いな。

なんかホッとするよ。

そんな二人に、シルナはそっと呟いた。

「えーと、申し訳ないんだけど、キュレム君とルイーシュ君…には、遠征メンバーに加わって欲しいかなー…と思ってるんだけど」

「ほらぁぁ!散々フラグを立てるから、ご指名されちゃったじゃねーの!」

「僕も行かなきゃいけないんですか?…えー…」

キュレムはともかくとして、ルイーシュもめっちゃ嫌そう。

気持ちは分からなくもないが…。危険だからな。

「さすがのルイーシュでも、やっぱり冥界は怖いか」

「別に怖くはないですよ?ただ余計な仕事を増やされて面倒臭いってだけです」

あぁ、うん。そう。そういうこと。

怖いからとか危険だからじゃなくて、面倒臭いからなのな。ルイーシュらしい。
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