神殺しのクロノスタシス6
第5章

マシュリside

――――――…現世でも、冥界でもない場所。

天国でも地獄でも、あの世でもない。

断絶空間ともまた違う、世界の何処でもない時空の狭間。

いつの間にか、僕はそこにいた。

「…」

ここは何処なのだろう。何でこんなところにいるんだろうと考えて。

そして、思い出した。

…そうだ、僕は死んだのだ。

あの日、あの夜、イーニシュフェルト魔導学院の園芸部の畑で…。

心臓に剣を刺されて…殺された。

だから、僕はここにいるのだ。

あの世でもこの世でもない、時空の狭間に。

僕は自分の身体を見下ろして、そして自嘲気味に笑った。

だって、笑わずにいられようか。

全く情けない話じゃないか。

生きている間も、散々化け物だの、半端者だのと罵られて…。

この世にお前の居場所などないと、口癖のように言われて…。

ようやく死んで、名実共にこの世の生き物ではなくなって…。

やっと死んで解放されたはずなのに、化け物である僕は、あの世にさえ行けない。

化け物の居場所なんて、この世にも、あの世にもないんだ。

だから、死んでも他の人のように、あの世には行けない。

安らかに眠ることなんて、僕には許されない。

こうして、世界の何処でもない場所を…魂だけの存在になって、永遠に彷徨い続けるしかないのだ。

…お似合いじゃないか。僕には。

もう良い。全て、どうでも良い。

だって、もう何もかも終わったのだから。

僕はもう何処にも行けない。何も出来ない。何もかも、もう終わってしまったのだ。

後悔はなかった。裏切りの半端者には、相応しい末路だ。

…ただ一つ、悲しいことがあるとしたら。

ようやく、僕も死んで解放されたというのに…。

あの世に行けない僕は、死者の世界でさえも、「彼女」に再会することは出来ない。

…それだけが、悲しかった。

…いや、それだけじゃないな。

同じくらい…もっと悲しいことが、他にも…。

でも、もう全部終わった。

どれだけ悔しくても、悲しくても、…寂しくても。

僕に出来ることは、もう何もない。

ここで、永遠に彷徨い続けるだけ。永遠に、一人で…。




「…本当にそう?」



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