神殺しのクロノスタシス6

羽久side

――――――…準備は出来た。 

あとは、いざ、冥界への旅に出発するだけである。

この先何が待ち受けているのか、内心ハラハラしながら、

「えーと、こっちがチョコレートバー…。こっちがチョコビスケット…」

…。

なんか呑気な声が聞こえてきたので、振り向いてみると。

シルナが、リュックサックにチョコレートを詰めていた。

…何やってんの?

こいつは見なかったことにしよう。

「よし。準備出来た」

「何かお土産になるようなもの、見つけられたら良いねー」

令月とすぐりは、二人共お揃いの風呂敷包みを身体に巻き付けていた。

…遠足感覚?

「お前ら、それ…その風呂敷何?」

「これ?暗殺非常用持ち出し袋」

「『アメノミコト』時代から使ってる優れものだよー」

「へぇ…」

何が入ってるの、と聞いてみたかったが。

絶対ろくなもの入ってないから、敢えて聞かないでおこう。

「ジュリス、見て見てー。おやつにね、うんまい棒買ってきたよ」

「何でそんなもん買ってきたんだよ…。遊びに行くんじゃないんだぞ」

「うんまい棒のね、サルミアッキ味」

「本当に何でそんなもん買ってきたんだよ…!?」

…買ってくる方も買ってくる方だが、売る方もよくそんなもん売ってたな。

ネタか?ネタなのか?

一方、キュレムとルイーシュはと言うと。

「キュレムさん、ペプシとコーラどっちが良いですか?」

「どっちでも良いわ、そんなん…。似たようなもんだろ」

「分かりました。じゃあコーヒー牛乳にしますねー」

「それは全然違うもんだろ!?」

…こっちも呑気してんな。

残りのメンバーと言ったら…。

「えーと、包帯と消毒液、解熱剤…。念の為に、体温計とピンセットも入れて…」

「よしっ。天音さんが他所を向いてる隙に…風船ガム入れておこうっと」

「あぁっ…。ちょっと、ナジュ君。救急箱にガムを入れちゃ…」

「グミも入れておこーっと」

「ナジュ君っ…!」

…。

…なぁ。

これから、魑魅魍魎が跋扈する恐ろしい冥界への旅に出ようっていうのに。

何で、遠足の前夜みたいな雰囲気になってんの?
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