神殺しのクロノスタシス6
…さぁ、いよいよだな。

「…『門』を開け。ベルフェゴール」

俺達の水先案内人、吐月が、ベルフェゴールに血を捧げると。

何もなかった空間に、突然、赤黒い奇妙な色をした亀裂が入った。

亀裂はたちまちに、人が入れる大きさにまで広がった。

これが…冥界と現世を繋ぐ『門』。

「…っ、くっ…」

「…!吐月、大丈夫か?」

この『門』を開く為に、相当魔力を使っているのだろう。

吐月の顔に、苦悶の表示が浮かんでいた。

それでも。

「大丈夫…。…行って。必ず持ち堪えるから」

吐月は気丈に、そう言ってみせた。

…頑張ってくれている吐月の為にも、俺達が二の足を踏む訳にはいかない。

「…シルナ」

「…うん」

シルナは、全く恐怖を感じさせない明るさで。

まるで、これから一緒に未知の世界に飛び込むように。

その手を、俺に向かって差し出した。

「行こう、羽久。君と一緒なら、私は何処にでも…」

「…あぁ」

俺は、その手を取った。

そして、よーいどんでスタートを切るように。

躊躇わずに地面を蹴り、『門』に向かって飛び込んだ。

恐怖心はなかった。

当然だ。

仲間が…シルナがいるのに、俺が何を恐れることがあろうか。
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